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アクティブ運用者の使命とは(重見吉徳)

フィデリティ投信 フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト

写真はイメージ=PIXTA

皆さんの金融資産のなかでは、アクティブ・ファンドとパッシブ・ファンドがどう配分されていますか。その配分が資本市場にどんな影響を与えているのかを少し考えてみませんか。

株式市場のホット・トピックは、米国のテクノロジー企業に代表されるグロース株式(成長株式)の優位が続くのか、はたまた、金融や自動車などの製造業、資源・素材といったバリュー株式(割安株式)の逆襲があるのか、でしょう。一方で、米国のみならず、世界では、一部の選挙戦を含め、ダイバーシティー(多様性)や巨大企業による独占が、キャンペーン(運動)や政策のテーマになっています。

筆者は、これらが議論されるならば、パッシブ運用(インデックス投資)の騰勢を議論することも有益ではないかと考えています。

まず、パッシブ運用の騰勢は、バリュー株式投資を大きく退潮させ、さらにグロース株式の割高さを助長し、資本市場の不安定性につながっている恐れがあります。

割安な株式を買う一方で、グロース株式に代表される割高な株式を売る、伝統的な『バリュー運用』の長期的な退潮は、機関投資家を中心に、コストの低いパッシブ運用へのシフトを促してきました。

バリュー運用が解約されてパッシブ運用に入れ替えられるときには、(バリューの投資家が持っていた)割安な株式のオーバーウエートと割高な株式のアンダーウエートの持ち高が「解消」されるため、割安な株式はさらに割安に、割高な株式はさらに割高になる圧力が生じます。パッシブ運用の騰勢は「グロース優位・バリュー劣後」の現状に一枚かんでいるとみられます。

上の図は米投資信託協会(ICI)のデータに基づいて、ミューチュアル・ファンド(オープンエンド型の投資信託)への資金純流入金額とETF(上場投資信託)の純発行金額とを比べたものです。直接の比較ではないものの、ミューチュアル・ファンドをアクティブ投資の代理変数、ETFをパッシブ投資の代理変数と置くと、パッシブ運用の騰勢が確認できます。

次に、ダイバーシティー(多様性)や巨大企業の独占については、公平な取り扱いと競争の公正さがポイントのひとつでしょう。これを資本市場に当てはめると、パッシブ投資は、資本市場に「ただ乗り」し、アクティブ投資にコストを転嫁している、あるいは、パッシブ・ファンドの投資家は、アクティブ・ファンドの投資家から、超過利潤を得ている恐れがあります。

例えば、パッシブ運用では、インデックスの構成銘柄が変更される場合には、ある銘柄を売って、他の銘柄を買うという取引が必要になり、そのためには、前者の買い手と後者の売り手が必要です。パッシブ運用者による、そうした取引を実現させるのは、アクティブ運用の投資家たちです。言い換えれば、すべての投資家がパッシブ運用になることはできません。パッシブ運用にとってアクティブ運用は必須で、逆はそうでもありませんが、こうした関係性とは裏腹に、パッシブのコストは低く、アクティブのコストは高くなっています。しかし、この状況を不思議に思う人はとても少ないようです。

資本市場は、実体経済で活動をする企業にとって、資本調達の場であり、資本コストの水準を推し量るための場です。経済活動を支える、このインフラは常時、見方や考え、信念の異なる売り手と買い手によって支えられています。資本市場というインフラを支えるためには、売り手と買い手が常駐する必要があり、そのコストはすべての資本市場の参加者によって公正に負担される必要があるでしょう。

アクティブ運用者の使命は、他の投資家との戦いに勝ち、超過収益を出すことです。「結果が見える。ダメなら退場」ですから、プロのスポーツ選手と似ているかもしれません。しかし、プロスポーツの場合、ファンが「意味」を見出すのは、結果というよりも、(たとえ負けても)どう戦うかです。筆者は、今後に生き残るアクティブ運用者は、結果だけでなく、「戦い方(哲学や信念)」への共感をいかに得られるかだと考えています。

我々は、企業への投資や企業との対話に注力をしてきましたが、今後は、投資家との対話によって、我々が社会に、どのような貢献をしていきたいかを伝え、これに共感・信頼をしてくれる人たちを増やしていくことも重要だろうと考えています。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
重見吉徳(しげみ・よしのり)

2002年大阪大大学院了(経済学修士)。農林中央金庫や野村アセットマネジメントで外債などの投資・運用業務に従事。JPモルガン・アセットマネジメントを経て、20年より現職。
[日経ヴェリタス2020年9月6日付]

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