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野球を変えたJFK 引退決めた阪神・藤川の功績

2020/9/5 3:00
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今季限りでの引退を決めた、日米通算245セーブを誇る阪神・藤川球児(40)は野球の継投を変えた。ジェフ・ウィリアムス、久保田智之と形成した救援トリオ「JFK」の中核を担い、一時期は9イニング制の野球を事実上、六回までの競技にした。クローザーをチームのエースと遜色のない地位に引き上げて投手分業制を加速させ、現代野球の戦術や新たな価値観の形成に多大な影響を与えた。

 今季限りでの現役引退を発表し、記者会見する阪神の藤川=共同

今季限りでの現役引退を発表し、記者会見する阪神の藤川=共同

「甲子園では野球は六回で終わり。JFKは、野球の根本をがらりと変えたよ」。2月に亡くなった名将、野村克也が楽天監督だった2008年、交流戦で甲子園を訪れた際にぼやいたひと言が忘れられない。

JFKの登場後、各球団は「守護神3枚」という斬新な発想に基づいた勝利の方程式を次々に確立。JFKは、先発投手を中心に組み立てられてきた継投策など野球の戦術に革命を起こしたといっても過言ではない。

9月1日に兵庫県西宮市のホテルで開いた引退会見。藤川は愛着あるチームの後輩たちに向け、熱いメッセージを送った。「一人でも多くのファイターをつくり、束になって立ち向かっていくことが大切になる。JFKも3本の矢でしたからね」

 2008年9月、通算100セーブを達成した=共同

2008年9月、通算100セーブを達成した=共同

3人で力を合わせ、よきライバルとして競い合いながら、ぐんぐんと高みにのぼっていった。藤川にとって最大の幸運は、20代半ばの選手として大切な時期に久保田とウィリアムスという2人の仲間に恵まれたことなのかもしれない。

3本の矢の中でも、藤川の輝きは際立っていた。捕手として全盛期のボールを受けた現・阪神監督の矢野燿大は「相手打者がストレートが来ると分かっていても打てない。本当に魔球のようだった」と、藤川の代名詞となったホップするような直球について述懐している。

本人も「(自分の直球に対して)自信があったわけじゃないといえばウソになる時期があった。簡単に三振が取れるし、なんだこれは、と思った」。ほぼこの直球一本で最多セーブのタイトルを2度獲得。05年に当時の日本記録となった80試合登板や07年の10連投に象徴されるように、タフさも備えていた。

 2005年9月、リーグ優勝を決めコーチと抱き合って喜ぶ藤川(右)=共同

2005年9月、リーグ優勝を決めコーチと抱き合って喜ぶ藤川(右)=共同

全盛期はむしろ、打たれることがニュースとなった。藤川が敗者となった名シーンも数多い。08年の中日とのクライマックスシリーズ第1ステージ。勝った方が第2ステージ進出となる第3戦は0-0の九回2死三塁で4番タイロン・ウッズと対した。真っ向勝負を挑んだ藤川は150キロの直球を決勝本塁打され、阪神の敗退が決まった。

JFKの生みの親で、当時の阪神監督だった岡田彰布が巨人に最大13ゲーム差をひっくり返されて優勝を逃した責任を取り、既に辞意を表明していた。藤川は監督への恩返しを胸に日本シリーズ出場を目指したが、それをはたせず「最後、岡田監督にとてつもなく迷惑をかけてしまった」とうなだれた。

2019年はクローザーに返り咲き

岡田は「おまえが最後でよかったよ」とまな弟子に別れの言葉を贈った。真っ向勝負を選んだ藤川の男気に、すがすがしい表情だった。けれん味のない投げっぷりはファンのみならず、岡田や矢野ら周囲の監督、選手をも魅了した。

息長く活躍できるようには見えなかった駆け引き無用の投球スタイルで、40歳を迎えた今季まで現役を続けられたことも驚きだった。19年にも引退の意向を球団に伝えていたが、シーズン途中から直球の威力を取り戻し、クローザーの座に返り咲いて16セーブを挙げた。このため、球団側が慰留し、今季も現役を続けるに至ったという。

 1998年12月、阪神新入団発表の藤川(前列右)。時の監督は野村克也氏(前列左から2人目)だった=共同

1998年12月、阪神新入団発表の藤川(前列右)。時の監督は野村克也氏(前列左から2人目)だった=共同

今季は4日現在で1勝3敗2セーブ、防御率7.20。本人からの再度の引退の申し出に、球団側も限界を悟った。

それでも、球速自体は今季もコンスタントに140キロ台後半をマークしていた。全盛期に比べればもちろん球威は劣るが、不惑の声を聞いても150キロ近い速球を連発する姿は驚異的だった。

名球会入りは「考えない」

本人も1日の引退会見で「今季に限れば、(状態が上がれば)相手を倒すボールを投げることができる可能性はある」と、残り少ない現役生活で1軍昇格を果たし、チームの逆転優勝に貢献したいとの胸の内を明かした。名球会入りの条件となる日米通算250セーブにあと5と迫るが、「考えたことはない」と、個人記録へのこだわりはきっぱりと否定した。

「入団時に3回優勝すると言ったけど、まだ2回しかしていない」。今季が3回目へのラストチャンス。「いつ潰れてもいいという覚悟で投げてきた」。粉骨砕身を身上とする希代のクローザーは、残された時間でどのような姿を見せるのか。1軍で再び投げる勇姿を見るのが待ち遠しい。=敬称略

(田村城)

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