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豪雨被害の熊本県球磨村 住民戻らず、集落の存続危機

(更新)
球磨川が氾濫し、多くの家屋が被害を受けた茶屋集落(1日、熊本県球磨村)

記録的な豪雨による球磨川の氾濫で、全世帯の約3分の1が浸水被害に遭った熊本県球磨村。4日で豪雨から2カ月が過ぎたが、村外避難を続ける住民が多く、転居も相次いでいる。人口流出に歯止めがかからない中、村は復興に向けて難しいかじ取りを迫られている。

豪雨で道路が寸断され、孤立した球磨村神瀬地区。1日昼に訪ねると、集落に流れ込んだ土砂を搬出するダンプカーが狭い道をせわしなく行き交っていた。だが自宅の片付けに訪れる住民の姿はまばら。浸水被害に遭っていない住宅からも生活感が感じられない。

8月末に自宅での生活を再開した同地区の女性(69)は「橋にたまっていた土砂が撤去され、電気も復旧したが、当面は近所の住民も戻らないだろう」と話す。同地区では商店2軒も流失し、今も断水が続く。女性は日中、職場のある人吉市に通って生活物資を調達。近くの川の湧き水を使って衣類や食器を洗っているという。

球磨川沿いにある別の集落ではほぼ全ての住宅が全壊した。隣接する集落に住む女性(72)は「被害が大きい川沿いの家屋は再建できないだろう。近所の人が離れていくのは寂しいが、村には土地が少なく仕方がない」とこぼした。

高台にある総合運動公園で建設が進む仮設住宅(1日、熊本県球磨村)

球磨村では約1400世帯のうち490棟が浸水被害に遭った。家屋被害を免れても交通網の寸断や断水で生活基盤を失った集落もある。鉄道や村営バスの再開は見通せず、14人が犠牲になった特別養護老人ホーム「千寿園」も運営再開を断念。村の高齢者施設は1カ所になった。

村によると、1日時点の人口は1393世帯3429人で、被災前(7月1日)から約80人減った。村外の避難所で過ごす住民も2日時点で135世帯254人いる。仮設住宅も一部は村外に建設される予定だ。

1日、取材に応じた松谷浩一村長は「村には交通機関も商店も特養も必要だが、復旧の見通しは立たない。住民の意向を聞き、早期に村の方向性を示さなければ、復興につながらない」と危機感を募らせた。

過去の災害でも人口が流出する例は目立つ。2004年の新潟県中越地震で被災した旧山古志村の人口は被災前の約2100人から886人(8月1日時点)に減少。11年の東日本大震災でも宮城県女川町の人口が約1万人から6280人(7月末時点)に減った。

国土交通省は、被災地や災害リスクの高い区域の住居を安全な場所に移転しやすくするため、1972年に「防災集団移転」制度を導入。用地購入や宅地造成、住宅移設などの事業費の約94%を国が負担する仕組みだが、移転先に造成する住宅団地の規模は「10戸以上」が条件で住民の合意形成が難しく、東日本大震災を除くと04年の新潟県中越地震以来、制度の利用はない。

このため、同省は20年度に利用条件を「5戸以上」に緩和。同省都市安全課は「近年は災害が激甚化しており、被災前の集団移転も視野に入れてほしい」と呼びかける。

復興計画に詳しい兵庫県立大大学院の沢田雅浩准教授は、11年の紀伊半島豪雨で被災した奈良県十津川村を例に挙げ、復興住宅と福祉施設を集約して新たな集落をつくることなどを提案する。「居住者が減っても転出した元住民やボランティアと交流を保ちながら日中の人口を維持する方法もある。住民の意向に加え、他の被災地の取り組みも参考に復興計画を検討してほしい」と話している。

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