自己資本比率の維持急ぐ 中国銀行、劣後債で資金調達

2020/9/3 20:31
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ソーシャルボンドの発行は地銀で初めてという(岡山市の中国銀本店)

ソーシャルボンドの発行は地銀で初めてという(岡山市の中国銀本店)

中国地方の地銀の間で、劣後債の発行による資金調達が相次いでいる。山口フィナンシャルグループは9月に計200億円、中国銀行は10月に100億円をそれぞれ発行する。狙いや背景などのポイントをまとめた。

Q 劣後債とは。

A 劣後債は普通社債と比べて、経営破綻時などに元利金の返済順位が低く、調達した資金は資本としてみなされる。その分、金利が高いデメリットはあるが、事業会社でも採用されている。

Q 発行の狙いは。

A 財務の健全性を示す自己資本比率の維持が目的の一つだ。地銀の場合は算出の仕方が特殊で、まず分母になるのが「リスクアセット」。これは保有する国債や有価証券、貸出金などそれぞれの残高にリスクウエート(掛け目)と呼ばれる倍率をかけ算し、合算したものだ。

分子にほぼ相当するのは資本金を含む「純資産」だ。劣後債の発行は分子を増やすことにつながり、分母が増えたとしても自己資本比率を維持できるという仕組みだ。

ちなみに国債のリスクウエートは0%(0倍)。2008年のリーマン・ショック後に買った国債の元本が、ここ5年や10年で手元に戻ってきた地銀もある。国債に再び投資したり、別の有価証券で運用したりできるが、低金利環境ではうまみは少ない。

中国銀行の20年3月末の国債残高は6500億円と、5年前と比べ半減した。手元の現金がだぶつくと、預金と貸出金のギャップが広がる。そうすると地銀経営を分析する上で重要な指標「預貸率」が低下してしまう。同行の預貸率は70.9%(20年3月末)と年を追って少しずつ上がっているが、80%前後で推移している山口FGや広島銀行と比べると低い水準だ。

Q ならば、融資を増やせばいいのでは。

A その通り。足元は新型コロナウイルスの影響もあり、各行で貸出金が大きく伸びている。

ただ、貸出金はリスクウエートが高い。融資先の格付けにもよって大きく振れる。例えば大企業であれば30%(0.3倍)のこともあれば、小規模事業者向けでは100%(1倍)を超えることもある。貸出金残高が伸びる分だけ分母のリスクアセットが膨らみ、自己資本比率の下げ圧力が強まってしまう。そのためにも資金調達で分子を増やそうという狙いがある。

Q 中国銀は100億円の調達で、どれくらい融資余力が上がるのか?

A 同行の6月末の自己資本比率(単体)は12.5%。この水準を維持するという視点で見ると、分子が100億円増えることで許容できるリスクアセットの増加分は800億円の計算になる。同行が貸出金にかけているリスクウエートの平均から逆算すると、少なくとも1000億円以上の融資枠ができる。

Q 中国銀が発行するのは「ソーシャルボンド(社会貢献債)」だが、珍しいのか。

A 同行によると地銀初だ。社会に貢献する活動を資金使途とするもので、コロナ対応という観点でも合致している。使途を環境関連の事業に充てるグリーンボンド(環境債)などと併せて「SDGs(エスディージーズ)債」とも呼ばれる。ちなみにSDGsは、国連が掲げる「持続可能な開発目標」のことだ。

SDGsの理念は「誰一人取り残さない」ことで、これは地域金融の世界でも重要なテーマだ。ソーシャルボンドで資金調達をしただけに、中国銀行が融資や事業再生などでどこまで踏み込んだ金融支援をできるかが注目点。地元企業から上がる生の声にも今後耳を傾ける必要がありそうだ。(田口翔一朗)

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