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病気後に自己ベスト更新 競泳自由形・塩浦慎理(下)

2020/9/5 3:00
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塩浦慎理(イトマン東進)を指導する中大水泳部監督の高橋雄介の手元に、忘れられない1枚の写真がある。2019年2月、千葉県内の大会で男子50メートル自由形を泳ぐ塩浦のタイムを手元のストップウオッチで計測し、表示された「21秒99」を撮ったものだ。

男子50メートル自由形決勝でスタートする塩浦(2019年7月、光州)=共同

男子50メートル自由形決勝でスタートする塩浦(2019年7月、光州)=共同

「記録を見て『これなら大丈夫だ』と興奮して。当時は彼より僕のほうが結果が出るか怖かったのかも」。撮影の理由を高橋はこう明かす。実はこの5カ月前の18年9月、塩浦はへんとう周囲膿瘍(のうよう)で2度の入院。約2カ月間、プールから離れていた。

13年に日本代表に選ばれてから国際大会の常連となっていたが、程なくして新たな壁にぶつかった。188センチと国内ではかなり大柄の部類だが、海外勢は当たり前のように2メートル近い選手がそろう。レースのたびに馬力の違いを見せつけられ、「しっかりパワーをつけて勝負したい」とウエートトレーニングの比重を上げ、体重も約10キロ増やした。

だが、14年4月の日本選手権を最後に自己ベスト更新はストップ。記録が伸び悩む間に2学年下の中村克(イトマン東進)に日本一の座を奪われ、自身の50メートルの日本記録も塗り替えられた。「社会人になって、テクニックをいろいろ考えて泳ぐうちに昔とずれて、どれが一番良いか分からなくなっていた」と振り返る。

そんな時期に襲った病魔。体重もごっそり落ち、少なからずショックを受けたが、自らこの逆境に活路を見いだした。病室のベッドでゆっくり競技人生を振り返るうちに「大学生の時はもっと楽に速く泳いでいたし、効率が良かった」と気づいた。ならば、当時の状態に戻せばいい。見舞いに訪れた高橋に「これからはスイム中心でやりたい」と申し出ていた。

練習再開後、自らメニューを追加した厳しいトレーニングに、がむしゃらにくらいついた。19年2月に実戦復帰すると成績は好調。2カ月後には5年間も苦闘した自己ベスト更新をあっさり達成し、21秒67の日本新をマークした。高橋は言う。「今まではトップだからかっこ悪いところを見せたがらなかった。でも病気をしたからもう怖いもの知らず。あんなに泥臭く努力する慎理を初めて見た」

新型コロナウイルスの影響で東京五輪は1年延期となり、調整は仕切り直しに。ただ、「最適解」を見つけた塩浦の心は上向きだ。「まだまだトレーニングできることがある。(来夏へ)頑張る気持ちが盛り上がってきたし、やる気満々で楽しみ」。リスタートの準備は整った。=敬称略

(堀部遥)

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