中国、不良債権問題が再燃 4大銀行の残高1.6兆円増 - 日本経済新聞
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中国、不良債権問題が再燃 4大銀行の残高1.6兆円増

【香港=木原雄士】中国で不良債権問題が再燃してきた。2日までに出そろった中国工商銀行など四大銀行の2020年1~6月期決算で、4行合計の不良債権残高(予備軍の要注意債権除く)は19年末に比べて1035億元(約1兆6千億円)増えた。新型コロナウイルス流行で貸出先の業績が悪化した。

4行はそろって1割強の減益だった。香港メディアによると減益は10年以降で初めて。コロナ禍による都市封鎖などで経済が急速に悪化し、貸倒引当金の積み増しを迫られた。

中国の金融当局は各行に貸し出し条件の変更などで資金繰りに窮した観光や小売り関連の企業を支えるよう指示していた。工商銀の谷●(さんずいに樹のつくり)行長(頭取に相当)は「減益は実体経済を支えよという中央政府の要請に応じたためだ」と述べた。

4行合計の不良債権残高は6月末に9216億元(約14兆3千億円)と半年前に比べて13%増え、貸出残高の伸び(8%)を上回った。不良債権比率は平均1.46%と、19年末に比べて0.05ポイント上昇した。17~19年は不良債権処理が進展して比率の低下が続いていたが、再び上昇に転じた。

各行の利益を圧迫したのが貸倒引当金の積み増しだ。最大手の工商銀は前年同期比27%増の1254億元(約1兆9千億円)、2番手の中国建設銀行は49%増の1115億元(約1兆7千億円)の費用を計上した。建設銀の●(革へんに斤)彦民・最高リスク責任者(CRO)は「1~3月はコロナの流行をうまく管理できていたが、4~6月に影響が広がり大規模な引当金を積んだ」と説明した。

中国は欧米に先駆けてコロナ対策に成功したが、世界経済の停滞は避けられない。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは「経済の回復力の鈍さから、中国の銀行の資産の質や利益に下押し圧力がかかりやすい」と分析する。

中国銀行保険監督管理委員会によると、地方銀行を含む商業銀行全体の6月末の不良債権残高は約2兆7千億元(約42兆円)だった。1年前に比べて5千億元(約8兆円)増えた。規模の小さな農村商業銀行に限ると、不良債権比率は4.22%と高水準だ。

ジェフリーズ証券のアナリスト、陳●(おんなへんに朱)瑾氏は「当局は不良債権の定義を厳格化して処理を加速するよう求めている。20年下期も不良債権比率の上昇は続きそうだ」と話す。

米中対立も影を落とす。7月に成立した米国の香港自治法は、香港の自治を侵害した人物と取引がある金融機関への制裁を可能にする内容だ。大手銀行が基軸通貨米ドルの決済から締め出されれば、国際業務に大きな支障が出かねない。

四大銀は中国企業の海外展開に伴い国際業務を拡大させてきた。預金や社債発行に伴うドル建て負債は19年末に約1兆900億ドル(115兆円)と3年前に比べて2割弱増えた。

4行の中でもっともドル負債が多い中国銀行の林景臻・副行長は米制裁への直接の言及を避けつつ「大国同士の対立の激化や地政学的な緊張の高まりなど国際業務は試練に直面している」と警戒感を示した。

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