
リモートで提供できない価値 問い直す 玄田有史氏
パクスなき世界 東大教授
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新型コロナウイルスによる危機をきっかけに世界は不連続の時代に入りました。あすはきのうの延長線上になく、古代ローマでパクスと呼ばれた平和と秩序の女神のいない世界が広がります。「パクスなき世界」のあすを考えるための視座をどこに置くべきでしょうか。労働経済学が専門の玄田有史東大教授にコロナ禍が人々の価値観や働き方に与える影響などについて聞きました。
――新型コロナウイルスは人々の価値観を変えたでしょうか。
「家族や健康を重視する傾向が一段と強まったとみている。『自らの希望を構成する要素は何か』を尋ねた継続調査によると、2000年代までは『仕事』との回答が最も多かった。働き方こそが自己実現の道という考え方は、他国と比べても突出して多かった」
「だが08年の金融危機や11年の東日本大震災といった経済的災害や天災を経て、人々は仕事よりも家族や健康を重視するようになってきた。ワークライフバランスという言葉が同時期にはやりだしたのも偶然ではない。今回のコロナ禍を経て、

新型コロナウイルスの危機は世界の矛盾をあぶり出し、変化を加速した。古代ローマの平和と秩序の女神「パクス」は消え、価値観の再構築が問われている。「パクスなき世界」では、どんな明日をつくるかを考えていく。