米マクドナルドを提訴、黒人の元店主「人種差別で被害」
【シカゴ=野毛洋子】米マクドナルドのフランチャイズチェーン(FC)店の黒人元経営者52人が1日、同社による人種差別で損害を被ったとしてイリノイ州の米連邦地方裁判所に提訴した。店舗経営で成功するための平等な機会を否定されたという。賠償請求額は合計で最大10億ドル(約1060億円)規模に達する。

訴えた元経営者はイリノイやフロリダなど複数の州で合計約210店舗を経営していた。訴状によると、黒人の元FC店経営者は低所得者層が多く住む黒人街での店舗開設を余儀なくされた。犯罪率の高い地域で店舗経営のコストが高くなった一方、マクドナルドからの支援は薄く、1店舗あたり400万~500万ドルの損害を受けたという。裁判が開かれるのは1年半から2年後になる見通しだ。
原告側のジェームス・フェラロ弁護士によると、マクドナルドの黒人FC店経営者は全体の約0.5%にとどまる。黒人経営者の数は減少傾向にあり、1998年の377人から2020年の186人に半減した。
一方、マクドナルドは、人種差別によって経営が失敗したとの原告側の主張を否定し「人種の多様性と平等な機会に向け当社がいかに取り組んでいるか事実は明らかになる」と述べた。FC店の経営者には開店場所を薦めるが、最終的な選択権は経営者にあると反論した。
同社のクリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は今年6月に米経済テレビ番組に出演し、「おそらく他のどの企業より多く黒人の百万長者を生み出してきた」と発言していた。
米国ではミネソタ州で起きた黒人男性の暴行死事件を発端に人種差別への抗議活動が続いている。米大手金融機関ゴールドマン・サックスが黒人幹部比率の引き上げを決めるなど企業も対応を進める。今回の提訴をきっかけにマクドナルドへの風当たりが強まる可能性もある。