霊場・出羽三山に大型風力発電計画 山形県など反発

2020/9/1 19:15
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修験道の霊場・出羽三山(山形県)で今夏、風力発電計画が明らかになった。最大で40基の風車を建設する東北でも有数の規模で、山形県の吉村美栄子知事が「ありえない」と述べるなど地元は猛反発している。ただ、予定地は県が風力発電の適地としていた場所で、土地利用を巡る適切な指針も必要となりそうだ。

「(開山から)1400年つないできた祈りの聖地を、我々の代でつぶしてはならない」。山伏の著書もある星野文絋さんをはじめ地元山伏ら5人は8月31日、鶴岡市内で記者会見を開いた。急きょ結成した団体で署名を集めるためで、「全国から『こんなものができるのか』と驚きの声が寄せられている」という。

記者会見した山伏の星野文絋さん(中央)ら「出羽三山の風車建設に反対する会」の共同代表(8月31日の記者会見、山形県鶴岡市)

記者会見した山伏の星野文絋さん(中央)ら「出羽三山の風車建設に反対する会」の共同代表(8月31日の記者会見、山形県鶴岡市)

風車は8月7日に前田建設工業が縦覧を始めた「風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」で明らかになった。羽黒山など2カ所に最大180メートルの風車を40基設置、総発電出力は最大12万8000キロワットとなる。実現すれば現在、県内に17カ所ある風力発電の合計出力を上回る規模となる。

鶴岡市の皆川治市長は記者会見で「重大な懸念を持っている」と指摘。吉村知事は「出羽三山は日本遺産にもなった日本の宝。しっかり守る」と反対した。同じ庄内地域にある酒田商工会議所の弦巻伸会頭も「経済活動の一環といっても、神聖な場所」と語る。

庄内地域にすでに稼働している風力発電(山形県庄内町)

庄内地域にすでに稼働している風力発電(山形県庄内町)

庄内地域には農地や沿岸部に風力発電があり、風車はおなじみの風景ともいえる。しかし、月山、羽黒山、湯殿山の総称である出羽三山は今でも山伏の修行の場で、近年は精神文化が残る聖地として欧米系の観光客の注目も集めていた。

前田建設工業は全国16カ所で風力発電を手掛けている。今回の計画について、「山形県の適地調査報告書などを参考にした」(広報部)という。再生可能エネルギーを促進する県が2012年に公表した報告書には、羽黒山周辺が適地の一つにあがっている。

報告書には「重要な信仰地で景観に注意」といった留意事項がある。県は「機械的に適地としたもので、ここがいいと保証したものではない」(エネルギー政策推進課)とするが、「景観に注意」ではすまない反発を招いたようだ。

配慮書では24年7月から建設工事を始め、27年に営業運転開始とする。同社は「まだ計画段階。地域住民の意見を踏まえ、今後の進め方を検討していく」とする。今後、知事の意見などを求めていくが、「届け出のみで建設でき、止める手段はない」(県エネルギー政策推進課)という。

建設に反対する会が風車完成時を想定して作成したイメージ図(大鳥居の後ろに羽黒山)

建設に反対する会が風車完成時を想定して作成したイメージ図(大鳥居の後ろに羽黒山)

福島県大玉村が昨年、調和を欠く太陽光発電の「設置を望まない宣言」を出すなど各地で問題が起きている。再生可能エネルギーの普及を目指す認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(東京・新宿)の飯田哲也所長は自身が山伏体験をした経験があり、「出羽三山のような景観を壊す場所は避け、地域の資産を守る必要がある」と語る。

適地が不足しそうだが、「先進地のデンマークもゾーニングで建設可能用地はわずか。それでも一部の土地があれば十分な量を確保でき、日本も農地や洋上の活用で推進できる」と指摘。開発者優位のなか、「自治体が『最低限ここはダメ』というルールを住民と作り、自然や景観との共存を図るべきだ」と語る。

(山形支局長 浅山章)

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