日本製鉄社長、コロナ禍で「追加の合理化は不可避」

2020/9/1 18:21
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日本製鉄の橋本英二社長は1日、日本経済新聞などの取材で、長期化が見込まれる需要減少への対応策について「2月に発表した施策に加えた大きな構造改革は不可避だ」との認識を示した。

記者会見する日本製鉄の橋本英二社長(1日、東京都千代田区)

国内生産体制を見直す必要性が高まっている(東日本製鉄所君津地区)

鋼材需要は急減し、約1億トンで推移してきた国内の年間粗鋼生産量は2020年度に8千万トンを割り込む見通し。橋本社長は「再び元の水準に戻ることは考えづらい」と述べ、収益改善に向けて一段と踏み込んだ手を打つ考えを強調した。今後は高炉の追加休止などを検討するとみられる。

同社は瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の閉鎖などを中心とする大規模な合理化策を決めている。米中貿易摩擦や中国をはじめとする海外企業との競争激化による収益低下を受け、日鉄グループ全体の国内生産能力を約1割減らす方針だ。

橋本社長は「コロナの悪影響から短期間で回復するとは考えにくい」との現状認識を示し、追加の合理化策が必要だと述べた。鋼材需要には回復の兆しもあるが、コロナ以前の水準に戻るかは不透明だ。このため合理化策の検討に入っていることを明らかにした。

新型コロナは国内の幅広い製造業に打撃を与え、生産活動は振るわない。さらに製鉄各社が懸念するのは海外の動向だ。日鉄は輸出比率が約4割に達する。世界市場では、コロナの影響から立ち直った中国勢の存在感が一段と高まっている。

最近の中国は鋼材需要が高まり、7月の粗鋼生産量は過去最多を更新した。現在はインドや韓国など周辺国から中国への出荷も拡大しているが、現地での需要が落ち込めば中国製などの鋼材が世界市場の需給を急速に緩和させることになる。

自動車メーカーの工場停止などに対応するため、日鉄は4月以降に国内の高炉5基を一時休止している。今後の需要は短期的には下げ止まるとみており、10月~2021年3月の単独粗鋼生産量は約1690万トンで4~9月を200万トン上回ることを想定している。

しかし日本企業の重要な輸出先である東南アジアで製鉄所の建設が進んでいることもあり、輸出を含む製鉄各社の事業全体の先行きを楽観視することは難しい。

様々な厳しい状況に直面する日本製鉄は国内生産体制の高度化と海外での直接投資を成長戦略の軸に据える。海外では19年にインドの鉄鋼大手の大型買収を実現させるなど、現地での生産販売で稼ぐ「地産地消」を加速している。橋本社長は米国や東南アジア、インドを念頭に「海外事業を深化させる」と述べた。

国内でも一段の合理化に加え、製造現場でのデジタル技術の活用などを進める。国内外で様々な手を打ち続けることで「中国勢を迎え撃つ」(橋本社長)構えだ。

(湯前宗太郎)

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