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最難関種目で世界に挑む 競泳自由形・塩浦慎理(上)

モヒカン頭に188センチの大柄な体つき。年始に開設したユーチューブチャンネルでは趣味であるコーヒーについて、いれ方や豆のこだわりを熱く語る。競泳男子の塩浦慎理(イトマン東進)を一目見て、彼が日本屈指のスイマーだと想像する者はそう多くないかもしれない。

男子50メートル自由形で決勝進出を決めた塩浦(2019年7月、光州)=共同

そんな個性的な28歳が主戦場とするのは、競泳の花形、短距離自由形だ。指導する中大水泳部監督の高橋雄介が「トップスピードで最も水の抵抗を受けやすいため、繊細な技術を持ち、なおかつクレバーじゃないと勝てない」と解説する種目で、塩浦は国内競泳界をけん引してきた。50メートルで5回、100メートルで2回日本一に輝き、2019年4月の日本選手権では50メートルの日本記録を更新。長身から生み出される、日本人離れしたダイナミックな泳ぎで世界に挑戦し続けている。

昨夏の世界選手権男子50メートル自由形では、01年以来、日本人2人目の世界選手権ファイナリストとなった。自分より大柄な190センチ台の選手が居並ぶ中、「レース前からわくわくしていた」と大舞台でも自然体。8位に終わったが、「ほぼ全力で予選から泳ぎ、3本目となる決勝で勝負する難しさを感じた。東京五輪前に一度経験できて良かった」と収穫をかみしめる。

幼い頃から五輪の表彰台を目指してきた。ただ、日本勢はまだ一度も50メートル自由形でメダルがない。「短距離自由形でやっていくなら五輪(のメダル)は厳しいんじゃないか」。周囲から心ない言葉をかけられることもあったという。

それでも「やりたくない種目で世界と戦うのは違うと思った」と高い山に挑み続けてきた。なぜ最難関の種目を選んだのか。「完璧を目指さないといけないから。完璧な技術をスタートからゴールまで一番速いスピードで完遂するのがスプリンターの難しさであり、おもしろいところ」

オリンピアンを輩出し、スプリンターの育成に定評がある高橋も、塩浦の才能には一目置いてきた。「僕が見てきた中で一番クレバー。セルフコントロール能力や集中力、試合の爆発力が最高の選手」。だからこそ教え始めてから10年、ずっとハッパをかけている。「塩浦慎理が世界を引っぱっていくんだぞ」と。

世界の強豪と競り合い、ようやく欲しい物が手に届きそうな位置につける。ゆえに塩浦の言葉には力がこもる。「かなり差がつまってきた。あと1年で追いつけそうな手応えがあるし、やり残しがないよう努力したい」。周囲をあっと驚かすようなラストスパートを仕掛けるつもりだ。=敬称略

(堀部遥)

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