トヨタとホンダ、災害時の電動車活用で実証実験

2020/8/31 19:36
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トヨタ自動車ホンダは9月から、燃料電池車(FCV)などを使った給電システムの実証実験を始める。地震や水害といった災害で停電が発生した際に使える電力供給インフラとしての役割を共同で訴えていく。電動車を防災に生かす取り組みが広がってきた。

トヨタのFCバスの電気をホンダの機器を通じて災害地に供給する仕組みをつくる

FCバスから取り出した電気をバッテリーに移し、照明用などに届ける

両社は「防災の日」を翌日に控えた31日、移動式発電・給電システム「Moving e(ムービングイー)」の構築に向けた実証実験を始めると発表した。トヨタが開発したFCバス「CHARGING STATION(チャージングステーション)」からホンダの機器を使い、効率よく電気を避難所などに届ける仕組みを目指す。

「得意技術を持ち寄ることで、電気のバケツリレーを実現できる」。ホンダの子会社である本田技術研究所の岩田和之エグゼクティブチーフエンジニアはこう述べた。トヨタのFCバスとホンダの給電・バッテリー技術を組み合わせ、被災地でのきめ細かな電力供給を実現する狙いだ。

チャージングステーションは設計の工夫で、従来のFCバスと比べてほぼ2倍の水素を収納できる。1台で供給できる電力量は最大490キロワット時(走行用など含む)。これは100キロメートル先にある50人程度が暮らす避難所に走って行き、必要な電力を3日間供給できる分量にあたるという。

両社の構想ではチャージングステーションを被災地に派遣し、ホンダの外部給電器「Power Exporter(パワーエクスポーター)9000」で電気を取り出す。ホンダの外部給電器は、車が出力した電気を直流から交流に安定して変換できるという。「発電機で培ったノウハウがある」(岩田氏)と同社は説明している。

給電器を通じてホンダが開発する中小型バッテリーなどに電気を移し、周辺の家庭などにも届けやすくする。トヨタの浜村芳彦FC事業領域統括部長はホンダの機器について「小分けして届けやすい利便性がある」と語り、被災地での移動に制約のあるFCバスの弱点を補えるとみている。

両社は「電気のリレー」が円滑に実現できるかを検証する。構想実現に向けた具体的なスケジュールは両社ともに明言を避けたが、連携する自治体なども募っていく。

排ガスがなく静かな電動車は最近、災害時の電源供給手段として注目を集めている。

日産自動車はEV「リーフ」を避難所の電源として自治体に無償で貸し出す取り組みを2018年に始めた。東京都渋谷区や神奈川県小田原市など55の自治体・企業と連携協定を結んでいる。電源としてのEVの価値をアピールするほか、公用車としての導入につなげる狙いもある。

19年に台風15号の被害があった際には各社の電動車が活躍した。そこで寄せられたのは「こんなことができたのか」「使い方を教えてほしい」といった声だった。本田技術研究所の岩田氏は「電動車で実現できることを訴えてきたつもりだが、ほとんどの顧客に認知されていないと改めて気付いた」と振り返る。

経済産業省が設立した電動車活用社会推進協議会は7月に「電動車の活用促進マニュアル」を公開した。今後は技術開発や実証実験に加えて、本格的な普及を目指したPR活動でも各社の連携が進みそうだ。

(花田亮輔)

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