コロナが変えた芥川・直木賞贈呈式

文化往来
2020/9/5 2:00
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第163回芥川賞・直木賞贈呈式で、写真撮影に臨む芥川賞の高山羽根子、遠野遥。画面はリモートで出席した直木賞の馳星周

第163回芥川賞・直木賞贈呈式で、写真撮影に臨む芥川賞の高山羽根子、遠野遥。画面はリモートで出席した直木賞の馳星周

「コロナ前の作品の選考会という意味では、今回が最後かもしれない」。8月28日に都内で開かれた第163回芥川賞・直木賞贈呈式で、芥川賞選考委員の平野啓一郎はこう述べた。例年大勢の人でにぎわうが、今年は限られた関係者と報道陣のみがマスクをつけて出席。受賞者の言葉にもコロナ禍への言及がみられ、世の中に広がった新しい感覚や問題意識を感じさせた。

「少年と犬」で直木賞を受賞した馳星周(写真上)のあいさつには、東京一極集中の過密リスクと、地方生活の可能性がにじんでいた。生まれ故郷の北海道浦河町からリモートで出席した馳。当地がサラブレッドの生産地であることに触れ「万が一、ぼくがウイルスを持って帰ると、生き物を世話するシステムに重大な被害を与える可能性がある」と話した。受賞の連絡も地元で受け、地域の人と祝杯を挙げた。「浦河の片田舎で受賞を聞く。俺らしくていいんじゃないかな」と振り返る。

創作への覚悟を語ったのは「首里の馬」で芥川賞を受賞した高山羽根子(写真右下)だ。「いつどんなかたちで困難がやってくるか分からない。書ける間は、縛られた手をほどいてでも、時代によっても変化しうるあやふやな物差しを掲げて信じていくしかない」と力を込めた。

一方、もうひとりの芥川賞受賞者、「破局」の遠野遥(写真左下)は「歴史のある賞をいただいて光栄に思います。受賞を機に、いっそう頑張って書いていきたい。3作目は『破局』より面白くなると思うので、読んでもらえたら」と1分に満たないあいさつだった。この淡々とした自信も、困難な時代に小説を書き続ける力になるかもしれない。

(桂星子)

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