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広島・長野に復活の兆し 真のプロの本領に期待

編集委員 篠山正幸

巨人から広島に移籍して2年目の長野久義(35)に、復活の兆しが出てきた。天才的な打棒を発揮してきた打者も、プロ10年目の昨季は自己最低の72試合の出場にとどまった。再起にかける気持ちが、チームを押し上げる力になるかもしれない。

外野手の新外国人、ホセ・ピレラが加入したこともあり、今季はまた代打でのスタートとなった。今季初登場となったのは開幕2戦目、6月20日のDeNA戦。

2-3と1点を追う八回2死一、二塁で代打に起用されると、左中間を破る逆転打。その後、DeNAの抑えを任されることになる三嶋一輝の球をとらえたスイングが、今季は違う、と予感させた。

その後は代打で出たり、出なかったりの日々。その状況を自らのバットで切り開いていった。

7月2日のヤクルト戦、3番中堅で今季初先発して2点打を放った。以後、先発した試合は毎試合のように安打を放ち、ベンチの信頼を得ていった。

8月は26試合中22試合に先発。8月2日から8日にかけ、代打の1試合を含めて6試合連続打点と、勝負強さを発揮した。本来の姿を取り戻しつつある。

長野は8月、26試合中22試合に先発し勝負強さを発揮した=共同

照れ屋なのか、大向こう受けすることは言わない。口を開いても「翔太が一塁からナイスランで(ホームに)かえってくれた」(6月20日の適時打で生還した走者の堂林に感謝)とか「(本塁打は)風に乗ってくれました」(8月8日の阪神戦で先制ソロ)とか、他人を立てたり、幸運を強調したりするばかり。

寡黙で、一歩下がったところにいながら、やるときはやる。クールで熱い。映画の世界でいえば、高倉健さんの役どころがはまりそうな雰囲気が、何ともいえない。

8月25日のDeNA戦で、三本間の挟殺プレーに、左翼から駆けつけて参加し、走者をタッチアウトにするシーンがあった。

残念ながら、本人に取材できなかったが、あの場面について問えば、三塁ベンチに帰るついでだったんで、とか照れ隠しで話していたのではないだろうか。そういうセリフが似合うのが、長野という選手だ。

FA補償選手として広島へ

鈴木誠也ら高校を出て入団し、2軍で汗と泥にまみれて育ってきた広島の主力のなかで、長野はちょっと異質の存在といえるかもしれない。

大学(日大)、社会人(ホンダ)と歩み、巨人に入っても、1年目からプロの壁などないかのように打ちまくり、規定打席をクリアして19本塁打をマーク。2010年の新人王に輝いた。

そのエリートが移籍することになるとは、入団の経緯から考えても、想像できないことだった。

昨年1月、巨人にフリーエージェント(FA)で移籍した丸佳浩の補償選手として、広島の"指名"を受けた。

寡黙で一歩下がっていながら、やるときはやる、という雰囲気が長野にはある=共同

プロでやるなら巨人、と思い定め、大学卒業時の06年秋のドラフトでは日本ハムに指名されたが、ホンダに進んだ。社会人での年季が明けた08年にはロッテにドラフト指名されたものの、巨人入りの意思は揺らがず、また1年待った。

そこまでして入団した巨人との別れ。このとき、球団広報から発表された「3連覇している強い広島カープに選んでいただけたことは選手冥利に尽きます」とのコメントが残るものの、その胸中は見当もつかない。

どんな選手もルールに従うのが当然とはいえ、大方のファンも、まさかの思いでこの移籍劇を見つめた。昨季マツダスタジアムで掲げられた「よく広島に来てくれたね」の応援メッセージに、人々の受け止め方が表れていた。

野手陣の層が厚い広島では長野といえども、なかなか出場機会が得られず、去年1年、浮上のきっかけをつかめないまま終わった。

野球人生でおそらく最大の試練といっていいかもしれない。しかし、その試練は、巨人時代の最後の1、2年、成績に陰りが出てきていた長野の再生のきっかけにもなりうる。

新天地の楽天で、ロッテ時代とは打って変わった姿を見せている涌井秀章ら、移籍が人生のいい節目になることも少なくない。その原理は自ら望んでの移籍であれ、不意の"人事"による移籍であれ、変わるものではない。

思わぬ運命に遭遇しても、バット一本でどこでも渡り歩く、という姿勢に徹した。そんな真のプロの本領が、これから出てくるのではないだろうか。

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