旅行は近場、庭でキャンプ… コロナが変えた夏の常識

2020/8/30 19:24 (2020/8/31 6:44更新)
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都民限定プランを利用して宿泊し、レストランへ食事に訪れた家族連れ(26日、東京都文京区の東京ドームホテル)

都民限定プランを利用して宿泊し、レストランへ食事に訪れた家族連れ(26日、東京都文京区の東京ドームホテル)

新型コロナウイルスを警戒した異例の夏が終わる。家族で遠出や帰省をするといった夏の「常識」は崩れたが、普段見過ごしていた場所などに目を向ける機運が生まれた。旅行は近場へ、キャンプは庭で――。身近な場所に新たな魅力を見つけ出した人々の夏を追った。

「東京都民限定プラン」を用意した東京ドームホテル(東京・文京)のレストランは8月末も利用客でにぎわっていた。「Go To トラベル」事業の対象外となった都民向けに8~9月末にほぼ半額のプランを提供。利用客数は想定以上といい、お盆期間は1日100人を超えた。

東京都練馬区在住の男性会社員(25)は「都内に泊まるのは初めてで新鮮だった」と笑顔を見せた。例年夏は家族で帰省や旅行で遠出をしていたが「今年はどこに行くにも迷惑をかけそうで断念した」。今回はホテルに隣接する遊園地で一日中遊んだという。

JR東日本JR西日本によると、お盆期間(8月7~17日)の新幹線や在来線特急の利用者数はいずれも前年同期比77%減だった。東京出入国在留管理局成田空港支局によると、お盆期間(7~16日)の成田空港の出入国者数は同97.9%減。新型コロナの影響で遠出を控える人が多かったが、逆に近場の魅力を「発見した」という声もあった。

「都内にもこんな場所があるんですね」「近場のオアシス。良い気分転換になりました」。SNS(交流サイト)に訪れた人の投稿が相次いだのが等々力渓谷(東京・世田谷)だ。東急電鉄大井町線の等々力駅から徒歩3分。東京23区唯一の自然渓谷で、この夏は遠出を控えた都民たちの「避暑地」としてにぎわった。

熊本県に住む男性会社員(37)は今年の夏、人との接触を避けようと、自宅から1時間以内のドライブで渓谷や山へ何度も向かった。例年は県内外のショッピングモールや繁華街に出掛けていたが、今年は「近場過ぎて知らなかった意外な名所を続々と発見できた」と興奮する。

初めて訪れた牧場の一角で見つけた満開のヒマワリ畑や、偶然通った山中にあった屋根が抜け落ちて朽ちた廃虚が印象的だったという。「自然に触れられ、面白い発見があった。コロナがなければできない体験だった」と満足げに話す。

豊かな自然の中で過ごすことが醍醐味だったアウトドアも変わった。毎年夏に友人家族らとキャンプ場へ行くのが定番だった兵庫県加古川市の男性会社員(40)が今年、家族4人でキャンプ用具を使ってバーベキューを試みたのは自宅の庭だ。

長男(7)や次男(4)は炭おこしを体験。興奮した様子で「またやりたい」と話した。男性は「山やキャンプ場に行きたいが、自宅でも意外とアウトドア気分を味わえた」と話す。

アウトドア用品の好日山荘(神戸市)によると、新型コロナの影響で今春以降、登山の自粛を呼びかけた山が目立った。一方、テントなどの山登り用品は売れ、4~7月の売り上げは例年並みだったという。

同社の写真投稿サイトでは、8月以降も自宅でキャンプ用具を使って調理をする投稿が相次ぐ。自宅の室内でテントを張る人も例年以上に多く、担当者は「コロナ禍の夏で新しい楽しみ方が生まれた」と話す。

塾や予備校で集団で学ぶ「夏期講習」が当然だった受験生の夏も様変わりした。

三重県伊勢市に住む中学3年の女子生徒(15)は例年より短い夏休み期間、「オンライン家庭教師」を使い、テレビ会議システムのZoomで分からない点を質問した。「感染リスクがなくて安心。塾や自習室までの移動時間がもったいない」と満足している。

動画投稿サイト「ユーチューブ」も活用し、数学のポイントをまとめたチャンネルや、他の人が勉強の様子をライブ配信する動画をよく見た。「家に一人だと寂しい。くじけそうになるとき、動画に励まされた」。新型コロナの流行が収まってもウェブを活用した受験勉強を続けるという。

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