中国、技術輸出の規制強化 TikTok売却交渉に影響も

【北京=多部田俊輔】中国政府はハイテクなどの技術輸出の規制を強化した。中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が米国などで展開する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を支える技術を含んでいる可能性があり、ティックトックの米国企業への売却交渉に影響を与えそうだ。
中国の商務省と科学技術省が28日夜に発表した「中国輸出禁止・輸出制限技術リスト」の改訂では、輸出制限の対象に人工知能(AI)や個人向けのデータ解析などを加えた。2008年以来のリストの改訂で、AIなどIT(情報技術)分野で発展した新技術などを網羅したという。
国営の新華社は29日、リスト改訂に関して、技術貿易を専門とする中国対外経済貿易大学の崔凡教授のコメントとして「バイトダンスはAIなどの技術を使っており、改訂後のリストに含まれる可能性がある」と報じた。崔教授はバイトダンスに売却交渉の中止などを真剣かつ慎重に検討すべきだと述べた。
ティックトックを巡っては、中国への個人情報の流出を警戒するトランプ米政権が6日、米企業などが45日後からバイトダンスと取引することを禁じる大統領令に署名した。14日にはバイトダンスに対し、米国事業を90日以内に売却するよう命じた。
ティックトックは米国で1億人の利用者を抱える人気アプリだけに、争奪戦は激しい。米小売り最大手ウォルマートは米マイクロソフトと組み、買収交渉に乗り出すと表明した。米オラクルなども買い手として浮上しており、米経済番組CNBCは「数日内に買い手が決まる」と伝えた。
ただ、中国政府が技術輸出の規制を強化したことでティックトックを巡る交渉は影響を受ける可能性が出てきた。リストに掲載された技術は政府の許認可などが必要で、バイトダンスと米企業の間で合意に達しても、米中対立が激化するなかで、中国当局の認可を得られるかどうかは不透明な情勢なためだ。