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大谷、不振脱した? 打球方向・角度に変化の兆し

スポーツライター 丹羽政善

23日のアスレチックス戦で5号3ランを放つ大谷=AP

1カ月ほど前に訪れたときには、くまなく広がっていた北カリフォルニアの青い空が、鉛色で覆われていた。山火事の影響により、太陽の光が煙で遮られたためだ。

23日のアスレチックス戦でエンゼルスの大谷翔平が22打席ぶりに放ったヒットはセンター左へのホームランとなったが、打球はその空の色に溶け、落下地点は映像で確認して初めてわかった。

打ったのは真ん中高めのシンカー。一般的には失投とみなされるコースだが、そうとも言い切れない。捕手は内角低めに構えていたので、投げたフランキー・モンタスの制球ミスといえば制球ミスなのかもしれないが、決して悪いミスではなかった。

(図1)コースの13分割

大谷は今季、高めの球に苦しんでいる。

図1のようにコースを13分割し、1、2、3、11、12の5カ所でどんな現象が起きたのか。今季開幕から本塁打を打つ前日(22日)までの全91球(対右投手)を調べると(図2)、約半分はボール球だったが、空振りが16.5%あり、ファウルも12.1%。ヒットは1本(1.1%)しかなかった。

(図2)高めの配球に対する結果(対右投手、7/24~8/22)  出所:Baseball Savant

相手にとって、言ってみれば高めはリスクの低いコースだったのである。

もともと、得意としているわけではない。同条件で以前と比較しても、極端な差があるわけではなく、過去2年はボールが45.3%で、空振りが12.8%、ファウルが18.7%、ヒットは3.4%、インプレーは6.9%、見逃しストライクが12.9%だった。

ただ、今年と過去2年を比較すると、その高めの球を打った場合の打球方向と角度が異なる。

24日のアストロズ戦で二ゴロを放つ大谷=共同

図3を見ると、過去2年、高めの球を打った場合の打球は一、二塁間へのゴロが多いことがわかる。一方で、後述するが、いい兆候でもあるセンターから左方向への打球も少なくない。ところが今年はこれまでとは異なり、右中間への打球が多く(図4)、それらはことごとく打球に角度が付きすぎて、平凡なフライになっていた。

もちろん、今季はまだサンプルが少ないので参考程度だが、相手投手が高めに投げるのは、空振りを取る、ファウルでカウントを稼ぐ、あるいはフライアウトを狙うケースが多いので、先ほどのデータを合わせて考えると、相手の注文通りの結果となっている。

ちなみに今年は平凡なフライそのものも多い。過去2年、打球角度が50度以上のいわゆる「ポップアップ」と分類されるフライは792打席で26しかなかった。しかし今季は7月24~8月22日までの87打席で、すでに12に達している。

高めを打った場合の打球方向
(対右投手、赤が濃いほど打球が多いことを意味する)
(図3)2018~19年
(図4)20年(7/24~8/22)  出所:ともにBaseball Savant

打球方向の変化は、高めの球に限らず、対左投手も含めた過去3シーズンの全打球方向をたどっても、そのことが分かる。今年の場合、反対方向への打球が極端に少なくなり、その分、右方向への打球が増えている。それぞれの方向の割合を打率(カッコ内)と併せて調べてみると、以下のようになった。

     大谷の打球方向(8月27日現在)
201836.9%(.342)37.3%(.495)25.8%(.382)
1930.9%(.313)37.8%(.390)31.3%(.500)
2042.4%(.143)42.4%(.391)15.2%(.444)

(出所)fangraphs.com

先ほども少し触れたが、やはりセンターから左方向への打球はヒットになる確率が極めて高い。引っ張ってもこれまでは打率3割を超えていたが、今年はわずか1割4分3厘だ。

このところ折に触れ、エンゼルスのジョー・マドン監督が「左中間へ飛ぶ打球こそが彼本来の打球であり、彼が良いスイングをしているとき」と話すのは、こうしたデータが根拠ともなっている。

大谷の場合、引っ張った打球はそもそもゴロが多く、本人も右方向への打球が多いときは、「ポイントが少し前にある」と、"ズレ"を認めている。仮にライト前にラインドライブのヒットが飛んでも、それはまだタイミングが早い。多くの場合、たまたまヒットになったにすぎない。

昨季序盤も同じような状況に陥り、「もう一つ(タイミングを)遅らせてバットを下に入れられればもっと打球を上げられる」などと説明していた。打撃練習で足を上げ下げしながらタイミングと距離感の修正を試みたが、今回は実戦で足を上げて打ってみたり、ノーステップに戻してみたりと、試行錯誤を繰り返す。

ただ、「タイミングと距離感のズレが良くなったり、悪くなったり」と大谷。「良くなった中でもヒットが出なかったり、その中で難しさがある」

それがたとえ、どんな当たりであれ、「ヒットになるかならないか、ヒット性の当たりも取られるか取られないかで、多少変わってくる」そうで、感覚がよくなったと感じても、結果が伴わなければ不安を招き、迷いを生む。

だからこそ、冒頭の本塁打は意味を持ったのではないか。久々にセンターから左中間へ飛んだ、大谷の言葉を借りれば「品のある打球」。しかも、打ちあぐねていた高めに飛距離の出る角度をつけた。

25日のアストロズとのダブルヘッダー第2試合で右中間に2点二塁打を放つ大谷=共同

以降、変化も見られる。25日のダブルヘッダー2試合目は、高めの球を打ち、シフトでショートの位置にいた三塁手への内野安打を記録し、最後の打席ではライト左へ二塁打を放った。それらは過去2年の傾向により近かった。

そして28日のマリナーズ戦。今季は全く結果が出ていない左投手と対戦すると、1打席目は高めのボール球に手を出して三振を喫したものの、2打席目は内角高めの球を"たまたま"ではなく、意識的に引っ張りライトへ二塁打。これは左投手の高めをとらえた、今季初のヒットとなった。

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