後任「影響力行使せず」 拉致未解決「痛恨」
首相会見要旨

28日の安倍晋三首相の記者会見の要旨は次の通り。
【辞任の理由】
8年近くの間、持病の潰瘍性大腸炎をコントロールしながら支障なく首相の仕事に全力投球できた。6月の定期検診で再発の兆候が見られると指摘を受けた。
薬を使いながら職務にあたってきたが7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となった。8月上旬には再発が確認された。
現在の薬に加えて新しい薬の投与を受けることにした。24日の再検査で薬の効果が確認されたが、継続的な処方が必要で予断を許さない。
政治において最も重要なことは結果を出すことだ。病気と治療を抱えて体力が万全でない中、大切な政治判断を誤ることがあってはならない。国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなる以上、首相の地位にあり続けるべきではないと判断した。首相の職を辞することとする。
最大の課題である新型コロナウイルス対応に障害が生じるようなことは避けなければならない。悩みに悩んだが、7月以降の感染拡大が減少傾向へ転じ、冬を見据えた対策を取りまとめた。新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと判断した。
任期をまだ1年残し、様々な政策が実現途上にある。コロナ禍で職を辞することについて国民に心よりおわび申し上げる。次の首相が任命されるまでの間、最後までしっかりと責任を果たす。
――「政権投げ出し」との批判にどう説明するか。
「9月に人事があり、国会が開会する。継続的に良くなる保証はない。政治的空白を生み出さないようにするため、このタイミングで辞任するしかないと判断した。任期途中だから批判は甘んじて受ける」
――判断はいつしたのか。誰かに相談したか。
「24日に自分1人で判断した」
【ポスト安倍】
次の自民党総裁をどのように選出するかは執行部に任せている。私が申し上げることではない。政策論争ができる時間はとれるだろう。次の総裁選に影響力を行使しようとは全く考えていない。
――岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官の評価は。
「個別具体的な名前はあえて挙げない。名前の出ている方々はそれぞれ有望だ。内閣や党において一緒に働いたことのある方ばかりだ。政策を競い合う中で素晴らしい方が決まっていくだろう」
――次の衆院選は。
「一議員として活動を続けたい。次なる政権にも一議員として協力し、支えていきたい」
【政権運営の成果】
レガシー(政治的功績)は国民、歴史が判断すると思う。経済では20年続いたデフレに挑み、400万人を超える雇用を作り出せた。働き方改革や一億総活躍社会へ向けて大きな一歩を踏み出すことができた。
外交・安全保障では平和安全法制を制定した。日米同盟を基軸として地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を展開した。国政選挙で力強い信任を与えていただいた国民の皆様のおかげだ。
北朝鮮による日本人拉致問題を解決できなかったことは痛恨の極みだ。ロシアとの平和条約、憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いだ。
【憲法改正】
残念ながら世論が十分に盛り上がらなかったことは事実だ。それなしに進めることはできない。
改憲4項目の案は党で決めたことだ。誰が総裁になっても当然取り組んでいくだろう。
【長期政権への批判】
――学校法人「森友学園」問題や「桜を見る会」の問題などを巡り、政権を私物化したとの批判がある。
「政権の私物化はあってはならない。誤解を受けたのであれば反省しなければいけないが、私物化したことはない」