コロナ対策実効性は 入院勧告見直し・ワクチン・検査

2020/8/28 21:05 (2020/8/29 4:59更新)
保存
共有
印刷
その他

新型コロナウイルス感染症拡大に備えた対策パッケージについて説明する加藤厚労相(28日、厚労省)=共同

新型コロナウイルス感染症拡大に備えた対策パッケージについて説明する加藤厚労相(28日、厚労省)=共同

政府が28日に発表した新型コロナウイルス対策は、重症者の治療に注力する体制づくりや全国民分のワクチン確保が盛り込まれた。今後の感染拡大時に医療現場の逼迫を避ける狙いだが、軽症者らを通じ感染が広がる懸念があるほか、ワクチンも開発途上。実効性がどの程度あるか未知数だ。

■指定感染症 運用見直し 感染拡大の引き金懸念

感染症法は危険度に応じて感染症を1~5類に分類し、措置を定めている。新型コロナは1~3類に準じた措置を柔軟にとれる「指定感染症」に指定され、当初は入院勧告や就業制限ができる「2類相当」とされた。その後の政令改正で、無症状者も対象となった。

現実には、8割の患者は軽症や無症状のまま回復している。医療現場などから「入院などの措置は厳格すぎ、業務を圧迫している」との指摘を受け、24日の政府の分科会で専門家が問題提起し、見直し機運が高まった。

具体的には、軽症や無症状の人は宿泊施設や自宅での療養とするため、政令改正などによる感染症法の運用見直しを検討。実現すれば、病院や保健所の業務の負担軽減を期待でき、高齢者や基礎疾患がある人ら重症化しやすい患者への治療を手厚くすることができる。

入院は感染者を隔離するため、感染拡大を抑止する側面もある。見直しによって家庭内での感染が増えるリスクも指摘され、地方自治体からは慎重論が相次ぐ。鳥取県の平井伸治知事は27日、「感染症を放置することに等しく、感染拡大の引き金になりかねない」と懸念を表明。埼玉県の大野元裕知事は28日の加藤勝信厚生労働相とのテレビ会議で「位置付けを見直すなら、軽症者らに宿泊施設への入所を勧告する権限を知事に与えてほしい」と訴えた。

東京医科大の浜田篤郎教授は「保健所などが逼迫しており対応を変えざるを得ないが、緩和する方向に一気に進むと、3月の欧米のように感染爆発に至る可能性がある。問題が起こらないことを確認しながら段階的に緩めるべきだ」としている。

■「ワクチン、全国民分確保」開発中 有効性は不明

新型コロナの感染を予防するワクチンについては「2021年前半までに全国民に提供できる数量を確保することを目指す」との考えを盛り込んだ。政府は21年夏の東京五輪・パラリンピックに間に合わせることを重視している。

米ファイザーと21年6月末までに1億2千万回分の供給を受けると合意している。その後、英アストラゼネカとも1億2千万回分の供給を受けると合意した。

ファイザーのワクチンは一人2回の接種が必要で、アストラゼネカのワクチンは一人1回か2回接種する。双方で少なくとも1億2千万人分は確保できる計算だ。

もっとも、いずれのワクチンもまだ開発中で、有効性は正式には確認されていない。海外で承認されても日本人に有効かわからない。状況次第では空振りに終わる恐れも残っている。

厚労省は契約量の上積みが必要とみて、米モデルナなど別の製薬会社との交渉を続けている。日本政府はメーカー側の要望に応え、ワクチンによる健康被害が生じた場合に企業が支払う損害賠償を国が肩代わりできるよう法的措置を講じる。

世界ではワクチンの争奪戦が激しくなっている。各国が製薬会社から優先的に供給を受けるために交渉や契約を進めており、日本が21年前半までに全国民向けに確保できるかは予断を許さない。

政府はワクチンの購入に予備費を活用するが、金額は明らかになっていない。ファイザーは米政府とワクチン1本あたり19.5ドル(約2千円)で1億本の供給契約を結んだと発表している。

国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)は「ワクチンは拙速に導入するのではなく、有効性と安全性の確認を適切に進めてほしい」と指摘。「打つか打たないか正しく判断できるようにするために、効果とリスクについて情報を提供する必要がある」と話す。

■検査1日20万件 インフルと両立 体制作りにハードル

コロナ対策の柱となる検査能力の拡充では、季節性インフルエンザの流行に備え、簡易キット型の抗原検査を1日20万件程度実施できる体制を構築するとした。実現すれば現在のPCR検査能力1日約5万9千件と合わせて1日26万件近い検査が可能となる。

インフルとコロナは症状から見分けがつきにくい。日本感染症学会は両方が流行した場合、両方の検査が望ましいとの指針を示している。

インフルの迅速検査キットの供給量は3千万回分に達する年もあり、同時検査には検査能力の引き上げが不可欠だ。政府はかかりつけ医など身近な医療機関で両方の検査が受けられる体制作りを目指すが、感染リスクの高さからコロナの検査を実施する医療機関は限られる。PCR検査に比べて精度が劣る抗原検査の利用も進んでいない。

東京歯科大の寺嶋毅教授(呼吸器病学)は「検査の拡充は妥当な判断だが、インフルの検査は鼻に綿棒を差し込むためコロナへの感染リスクがある。検査に二の足を踏む診療所は少なくないとみられ、両方の検査が受けられる専用の検査所の整備が必要だ」とする。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]