首相辞意表明、揺らぐ市場 次の針路は
安倍晋三首相が28日、辞任する意向を表明しました。2012年末から始まったアベノミクス相場は節目を迎え、これから国内政局は一気に流動化します。同日の日経平均株価は一時、前日比600円を超える下げとなりました。在任期間中の株価は就任時の1万0080円から2.3倍になり、歴代首相の中では3位となります。

7年8カ月に及ぶ在任期間中、安倍首相は金融緩和、財政出動、成長戦略の「アベノミクス」3本の矢を打ち出しました。ただ、バブル崩壊以降、日本が直面する人口減少、低成長という課題解決に向けた処方箋を示せないうちに、新型コロナウイルスの感染拡大による対応に追われて持病が悪化。任期途中での辞意表明となりました。安倍首相は28日の記者会見で、「政治において最も重要なことは結果を出すこと。7年8カ月、結果を出すために全身全霊を傾けてきた。病気と治療を抱え、体力が万全でない中で、結果を出せないことがあってはならない」と話しました。
28日の取引時間中に大きく揺らいだ株価が暗示するのは、ポストアベノミクスの日本の針路の不安定さです。相場の動向を左右する海外投資家の日本に対する視線が変わるかどうかによって、投資家の備えも変わってきます。

30日号の日経ヴェリタスでは、首相辞任後の政局展望を清水真人編集委員、マーケットの焦点を小栗太編集委員が解説します。
カバー特集は、不安定な時代に見直し機運が高まっているグループ経営に焦点をあてた「逆襲のコングロマリット~企業価値生み出す3つの変身」です。コロナ危機の後、投資家から敬遠されてきたコングロマリットに見直しの機運が高まっています。混迷の時代にレジリエンス(強靱さ)を保てる最適なグループ経営のあり方、事業ポートフォリオの組み方を探りました。ぜひご覧ください。
(日経ヴェリタス編集長 塚本奈津美)