インド、コロナで労働力不足、出稼ぎ労働者戻らず

2020/8/27 21:28
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【ムンバイ=ローズマリー・マランディ】新型コロナウイルスの感染者が320万人を超えたインドで、多くの企業が労働力不足に直面している。感染の拡大が続くなか、国内の出稼ぎ労働者の多くが故郷に帰ったまま都市に帰ってこないためだ。主要産業では自動車や建設業などが影響を受けている。

インドでは新型コロナの感染拡大で建設業の人手不足が深刻になっている=ロイター

南部ハイデラバードでディネシュ・グード氏が経営する美容サロンは、稼働率がコロナ前の2割にとどまる。美容師のほとんどが北部のウッタル・プラデシュ州の村に帰ってしまったためだ。

グード氏は従業員を引き留めようと「必要な食料をすべて提供し、家賃と光熱費も払った」。それでも彼らは引き揚げてしまった。「戻ってくるまでにはかなりの時間がかかるだろう」。グード氏は肩を落とす。

多くの事業主が同様の問題に直面する。モディ首相が3月25日に都市を封鎖した後、看護師、介護者、大工、配管工、電気技師などあらゆる熟練労働者が故郷に戻ったからだ。この現象は「リバースマイグレーション(逆移住)」と呼ばれる。

大企業にも影響は及ぶ。格付け会社インディア・レーティングス・アンド・リサーチは5日付リポートで、国内出稼ぎ労働者計約600万人に依存してきた製造業と建設業が最も影響を受けると分析。「逆移住によって各社は稼働率の低下、事業コストの上昇、利益率の低下といった課題に直面する」と指摘した。

それを裏付けるように、インド最大の建設・エンジニアリング会社であるラーセン・アンド・トゥブロは、同社の事業を支える下請け労働者が、都市封鎖を挟んで22万5千人から16万人に減少したと明らかにした。

地域別に見て最も影響を受けやすいとみられているのが、北部のデリーとそれに隣接するハリヤナ州だ。スズキホンダ、二輪車大手のヒーロー・モトコープなどの完成車メーカーと、取引先部品メーカーが立地する、インド屈指の製造業の集積地として知られる。

インドの4~7月の乗用車生産台数は約36万3千台と、前年同期比7割の大幅減となった。落ち込んだ主因は都市封鎖による消費の急減だが、労働力不足で生産に支障が出たことも響いた。

26日の時点で、インドのコロナの感染者数は320万人を超えた。米国とブラジルに次ぐ世界第3位の多さで、死者は6万人に迫った。終息の兆しが見えないなかで出稼ぎ労働者の都市への帰還も見通せない。

西部ムンバイの高級フィットネスジムで働いていたヤコブ・ミルザさんは、5月中旬に故郷のウッタル・プラデシュ州に戻った。都市封鎖後、猛暑と感染を避けるため換気の悪い小さな部屋に閉じこもっていたが、孤独と不安を感じたという。

「給与は家賃を賄うので精いっぱいだった。(店の閉鎖で)チップがもらえなくなり、生活が厳しくなった」とミルザさん。ムンバイへの未練はなく、故郷で仕事を見つけようと考えている。

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