アップル、ネット広告に制限 次期OSで個人情報保護強化

2020/8/27 21:39
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【シリコンバレ=白石武志】消費者のプライバシー保護を強化する米アップルが「iPhone」上のターゲティング広告の仕組みに切り込む。今秋に提供を始める最新基本ソフト(OS)「iOS14」では、端末情報の広告向け利用を制限する。ユーザーの属性や関心にあわせて広告を打つことが難しくなり、米フェイスブックをはじめとする世界のネット広告業界には大きな影響を及ぼしそうだ。

「我々が望んだ変更ではない」。フェイスブックは26日、取引先向けのブログでこう表明した。アップルがiOS14で導入する新たなプライバシー保護の仕組みによって、フェイスブックにアプリ内の広告枠を提供する外部事業者の収入が50%以上減少するとの試算も公表した。

フェイスブックの危機感の背景にあるのが、アップルが6月に発表した方針転換だ。

アップルはアプリ広告用の端末識別子「IDFA」の取得ルールをiOS14では厳しくする方針を打ち出した。同識別子は端末ごとに割り振られた固有の文字列で、フェイスブックなどのネット広告企業はこれを使ってアプリ向けにターゲティング広告を配信する。

現行のiOS13までは利用者がデータ提供を拒む設定にしない限り、ネット広告企業側は端末情報を利用できた。iOS14以降はアプリごとに利用者にデータを使ってもよいか同意を求める方針で、広告企業側が端末情報を取得できる割合は大幅に下がると見込まれている。

フェイスブックは外部事業者のアプリ内の広告枠に、自社のターゲティング広告を配信する独自サービスを手がける。アップルの端末識別子については、利用者の追跡などに活用。同サービスには世界で1万9千以上のアプリ開発者が広告枠を提供しており、2019年の1年間で同機能を介して支払われた金額は数十億ドルに上るという。

アップルの新たな方針によって、異なるアプリの間のデータ連携は難しくなる。ターゲティング広告の精度は大きく落ちる見通しだ。

世界のモバイルOS市場で75%前後のシェアを持つ米グーグルの「アンドロイド」でも同様の端末識別子が用意されている。だが今のところ取得ルールに大きな変更は予定されていない。iOSのシェアは25%程度にとどまるため、フェイスブックは「我々の広告ビジネスへの影響は少ない」としている。

ただアップルの取り組みは、これまでのネット広告の仕組みを大きく揺さぶるものだ。全米広告主協会(ANA)幹部のビル・タッカー氏は8月に出した声明で、「バベルの塔の物語では住民が共通言語を話すことができなくなったために都市が崩壊した」と指摘。端末識別子というネット広告の「共通言語」に大きな変更が迫られていることへの危機感を示した。

アップルはプライバシーを「基本的人権」と位置づけ、個人データを誰と共有するかは消費者が自ら決めるべきだという立場を取る。自社のネット閲覧ソフト「サファリ」ではネットの閲覧履歴などを保存する「クッキー」と呼ぶ仕組みのネット広告への利用を制限したほか、人工知能(AI)を使って外部企業によるデータ収集を難しくする取り組みも始めている。

アップルはアプリ配信や課金の仕組みをめぐっても「反競争的だ」と主張する米エピックゲームズからの訴訟に直面している。ここでもアップルは「消費者の安全を守るため」との理由で自社以外のアプリ配信や課金システムを認めていない。排他的とも受け取られかねないアップルの姿勢は、多くの摩擦や対立を生じさせている。

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