英語除く外国語検定 存続の危機 コロナで中止 - 日本経済新聞
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英語除く外国語検定 存続の危機 コロナで中止

(更新)

新型コロナウイルスの感染拡大で英語以外の「第二外国語」の検定試験を取り巻く環境が厳しくなっている。試験中止で受験料収入が得られず今後の見通しも立たない。専門家は異文化や多様な価値観に触れる幅広い語学教育の機会を失いかねない事態を懸念している。

「イタリア語を学ぶ人が目標を失わないように検定を続けたいが、状況は厳しい」。年間3千人以上が受験するイタリア語検定を運営する協会の岩崎保順専務理事は表情を曇らせる。

同検定は毎年3月と10月に実施しているが、新型コロナの感染が広がり始めた今年3月は中止した。試験会場のキャンセル代などを含め計900万円の損失を出した。6月から募った寄付金などで資金を調達したが、家賃や人件費などで月50万円以上の固定費はかかる。

民間の検定試験団体でつくる全国検定振興機構(東京)の感染対策ガイドラインは、受験者数は試験会場の定員の半分以下に抑えることなどを求めている。10月の試験はこれまでより広い会場を確保する必要があり、会場代も高くなった。

年2回の試験に2万人以上が受けるフランス語技能検定も6月の試験を中止し、年間収入の約4割を失った。次回の11月も中止になれば運営が難しくなる可能性があり、現在SNS(交流サイト)などを通じて寄付を募っている。

一方、英語の検定試験は既に再開したり、再開が決まったりしている。年400万人に迫る受験者数を持つ英検は6月の試験を実施しており、次回は10月に行う。

例年2月と8月を除いて毎月実施されるTOEICは、普段の受験者数約10万人を3分の1程度に抑え、9月から再開する。9月分は先着順で約3万6千人が受験する予定。10月分は申し込みが殺到してシステムが不具合を起こし抽選で受験者を決めた。今年度中はすべて抽選にするという。

第二外国語の検定試験は受験料が主な収入源で、感染状況で秋も試験を実施できなければ、軒並み運営が厳しくなる。過去には試験を続けられなかった言語もある。

日本アラビア語検定協会(福岡)は2017年までアラビア語検定を実施し、延べ700人以上が受験した。ただ、18年以降は試験をしていない。宮川佳子理事長は「今でも再開を望むメールが届くが、民間の有志だけでは資金力もなく、再開のめどはたたない」と明かす。

フランス語教育振興協会の西沢文昭理事長は「国は英語に偏らず、多様な語学学習を支える環境に経済的な支援を講じてほしい」と訴える。

日本では英語を除いて10カ国語以上の民間の検定試験が行われている。受験者は進学や単位取得、人事評価などのために受ける10~20代が大半を占める。

神奈川県立横浜国際高校(横浜市)では1年次は第二外国語が必修で、大半の生徒が3年間継続的に学習する。フランス語を指導する本間仁教諭は「検定を目標に勉強し、結果を大学入試で活用する生徒も多い。自分の努力の結果を客観的に評価できなければ、モチベーションを保つのは難しいだろう」と話す。

第二外国語を履修する日本の高校生は全体の1%にとどまるが、韓国や中国などでは多くの生徒が高校から学習する。

筑波大グローバルコミュニケーション教育センター長の臼山利信教授(外国語教育)は「日本の第二外国語の教育は既に出遅れている。さらに検定試験を継続できなくなれば第二外国語の教育は一層縮小しかねない。国際社会で活躍する人材の多様性を育むには、検定試験の維持も含め、国が第二外国語の教育を支える体制を整える必要がある」と話している。

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