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世界の京響、垣根は低く 広上淳一がホール館長兼任

文化の風

京響の常任指揮者と芸術顧問、京都コンサートホール館長を兼任する

京都市交響楽団(京響)の常任指揮者・広上淳一が、関西楽壇で一段と存在感を増している。4月から京響の芸術顧問を兼ね、そのうえ京響の本拠地である京都コンサートホール館長にも就任。折しも、新型コロナウイルスの流行が音楽事業にのしかかり、難しいかじ取りが求められる。打開の手掛かりはあるのか。

集客増にも関与

「僕など、かいらいですよ。足利義輝と同じ」(笑い)

武将や大名の角逐に翻弄され実権を伴わなかった室町幕府13代将軍に自らをなぞらえて謙遜する。とはいえ京響常任指揮者職はすでに歴代最長となり在任13年目に入った。

「京響との付き合いは指揮者人生の宝になった。たぶんこの楽団の演奏技術はすでに、世界水準に達している。京響の成長と並行して指揮者のキャリアを重ねられたことは誇りだ。日本を代表するオケとしてこれから世界のベスト10に入るかどうかが試される」

常任指揮者に加えて芸術顧問と京都コンサートホール館長も"重ね着"するとなれば、京都の音楽文化のかじ取りにさらなる関与が求められる。定期演奏会の演目決めや客演の指揮者選びなど年間プログラム作成だけでなく、ホール運営でも集客増や地域貢献などの新機軸に期待が高まる。

「(兼務は)ありがたいお話。僕に託された使命は、さらにより多くの市民が京響を身近に感じてもらい、より垣根を低くする、あるいは取り払うための総仕上げではないか」

若手に演奏機会

「例えば若い音楽家の卵たちによる30~60分の無料コンサートができたら。京阪神から名古屋までの音大生らに出演機会を与え、ほぼ毎日お昼時か昼下がりかになんらかの演奏会をやれば、市民が京都コンサートホールのある北山に足を運ぼうと思い立つかもしれない。そんな想像をしながら京都市立芸術大音楽学部指揮専攻教授の下野竜也さんと相談している。時間の都合さえつけば僕自身がステージトークを買って出てもいい。お客様と交流の橋渡し役を果たせたら本望だ」

ホールについては、運営のソフト面だけでなく、ハード面でも腹案がある。

「京都コンサートホールの響き、悪くはないけど、国内各地に優れたホールが相次ぎできて、いまや日本のベスト5には入らない。満席のとき、なぜかクセのある響きになる。指揮者として本来喜ばしいはずなのに、大入りだとかえってやりにくい。この落差をどう解消するか。音響エンジニアと相談し、ホールの響きを検討し直して修正できるならしていきたい」

「手掛かりとなるのが医療用語でいう『寛解』だ。症状を根治や全治できなくとも、病状が治まっておだやかであること。ホールを一から建て直すには、途方もない時間と費用がかかるが、現状に手を加えて改善できるなら負担も少ない」

今年、コロナ禍のあおりを食い、京都コンサートホールで事実上中止になった公演は京響の定期演奏会だけでも4回。中止にならずとも、海外の指揮者の客演がかなわず、代理を立て、演目さえ替えて入場者数を制限したケースもあった。重責を担った矢先にまさかの逆境。コロナ禍にあえぐ音楽界でこの「寛解」が、打開の手掛かりになると考える。

「コロナ以前の状態に戻るのに僕は10年かかるとみている。コロナの脅威をいなしながら、どう演奏活動を続けるか、試行錯誤を重ねるしかない」

「感染に配慮してホール入場者を制限するなら、チケット収入による採算構造も見直さなければならないかもしれない。ステージ上でも奏者をまばらに配置する最適解の模索が続く。楽員は『音圧が薄くやりにくい』と文句をいう前に、音を出せる幸せをかみしめたい。なにより脅威に負けず、立ち止まらないこと」(編集委員 岡松卓也)

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