トランプ氏、対中強硬貫く 共和党大会で実績誇示

米大統領選
2020/8/26 23:09
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トランプ大統領は実績のアピールに躍起だ=ロイター

トランプ大統領は実績のアピールに躍起だ=ロイター

トランプ米政権は大統領選での再選に向けた25日の共和党大会で中国に対する強硬姿勢を改めて打ち出した。政権発足から3年半の成果として中国への通商政策や、新型コロナウイルス危機までに景気拡大を実現したことを誇示した。現時点の支持率では民主党のバイデン候補にリードを許しており、実績のアピールに躍起になっている。

■南シナ海で圧力強める

ポンペオ米国務長官は25日、共和党大会の演説で「トランプ大統領が中国共産党の略奪的な攻撃性を暴いた」と外交の成果に対中政策を真っ先にあげた。エスパー国防長官も24日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)に寄稿し「世界は中国軍を研究して備えなければならない」と訴えた。

太平洋艦隊の情報部門を統括したジェームズ・ファネル氏は「米軍がインド太平洋地域での信頼を取り戻した」と指摘し、中国との摩擦を避けたオバマ前政権からの方針転換を評価する。米軍は南シナ海で複数の空母打撃群を同時に派遣したり、台湾海峡での航行の自由作戦を増やしたりして中国への圧力を強めた。

中国が最も敏感な人権問題でもトランプ政権はウイグル族の迫害や香港の自治衰退に対し、対中制裁を相次いで発動した。ただトランプ大統領は対中貿易合意を優先し、人権問題に関心が薄いとの批判も目立つ。

対ロシア政策では中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させ、米欧への内政干渉に制裁で対抗した。一方で欧州の同盟国に対しても軍事費負担を増やすべきだと圧力を掛け、駐独米軍の縮小も一方的に決めた。

アトランティック・カウンシルのイアン・ブルゼズィンスキー上級研究員は米政権の安保政策について「米欧同盟に大きな不確実性を生み、デメリットの方が大きい」と指摘する。

北朝鮮を巡っては2018年6月に史上初の首脳会談を開いたが非核化の進展は乏しい。アメリカン・エンタープライズ研究所のダニエル・プレトカ上級研究員は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長に記念撮影の機会を与えただけで、きまりの悪い結果に近い」と話す。

中東政策ではイスラエルの首都としてエルサレムを承認した。支持基盤のキリスト教福音派に配慮した決定だ。同国と対立関係にあるイランに圧力を強めるため核合意を一方的に破棄して経済制裁を再開し、国際社会から強い反発を浴びた。

■貿易「合意は進展」

トランプ大統領は24日、「中国から大豆やトウモロコシで過去最大の注文が入った」と成果を強調した。同日には貿易協議を開いて「第1段階合意」の「進展」を確認した。ただ米農産品の対中輸出は2019年、報復関税で政権発足前の16年より35%も減った。

トランプ氏の通商政策は中国の構造問題に挑んだ姿勢を支持する声が上がるが、関税という手法には批判が多い。米戦略国際問題研究所(CSIS)のウィリアム・ラインシュ上級顧問は「診断は正しいが処方箋を間違えた典型例」と評する。

トランプ氏は再選に向けて労働者に鉄鋼とアルミニウムに関税を課した実績も訴える。これに対して、米通商代表部(USTR)のウェンディ・カトラー元次席代表代行は中国の過剰生産の解消につながらず、米企業のコストが増し、同盟国に不信を生んだ「最大の失敗」と断じる。

トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、単独で中国に対抗した。アメリカン・エンタープライズ研究所のデズモンド・ラックマン氏は中国の知財侵害や補助金を糾弾した点を評価しつつ「欧州やアジアの同盟国と歩調をそろえていれば好ましい結果になっていた」と語る。

最大の成果に挙げる北米の新協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」は「古い協定の刷新に超党派で取り組めた」(カトラー氏)と一定の支持がある。同氏は日米貿易協定についても日本の農産品市場を開放できたと評価する。

■再選なら追加減税

トランプ氏は24日の演説で「経済は米国史上かつてない成功をおさめた」と誇示した。再選すれば追加減税を実施する方針も強調した。新型コロナウイルス危機に見舞われるまでは過去最長の景気拡大を実現、失業率は半世紀ぶりの低水準だったが、大型減税などの副作用も目立った。

「成績を付けるなら3段階のB」と米金融調査会社MFRのチーフエコノミストのジョシュア・シャピロ氏は評価する。トランプ氏は3%の経済成長率を公約に掲げたが、17~19年の平均成長率は年2.5%で、10~16年の年2.2%をわずかに上回っただけだった。

成長を押し上げたのは規制緩和と大型減税だ。しかし「減税はやり方が悪かったので効果が小さかった」とシャピロ氏はいう。米シンクタンク「税政策センター」の試算では、所得上位1%の税引き前所得に減税が占める割合が9.8%であるのに、中間20%の所得層では5.4%で、減税分を消費に回す層に恩恵が十分に行き渡らなかったと批判されている。

法人減税は企業の税引き後利潤を膨らませ、株価押し上げにつながった半面、減税効果は設備投資にまわらなかった。ウェルズ・ファーゴ証券チーフエコノミストのジェイ・ブライソン氏は「(米中貿易摩擦による)景気見通しの不透明さが企業の設備投資を損なった」と指摘する。

減税の副作用も大きく、財政赤字は年1兆ドル規模に膨張した。さらにコロナ対策で3兆ドルの財政出動を実施し、赤字は拡大の一途だ。

もう一つの公約だった製造業の復活も進んでいない。製造業分野の雇用は10~16年に約90万人増えたのに対し、17年からコロナ危機前の20年2月までは約50万人増で、伸びはわずかに上向いたにすぎない。「雇用者数は金融危機前の水準にほど遠い」(ブライソン氏)

3月にコロナ危機が起きると、約2200万件の雇用が消失し、失業率は14.7%まで悪化した。トランプ政権が誇る成果の大半が吹き飛び、4~6月期の成長率も過去最悪の前期比マイナス32.9%に落ち込んだ。(ワシントン=中村亮、鳳山太成、長沼亜紀)

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