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歩かなくなっていませんか? 今こそ脚づくりを
ランニングインストラクター 斉藤太郎

2020/8/27 3:00
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接地時間が長く、体をじっくり前へ運ぶウオークは筋力強化につながる

接地時間が長く、体をじっくり前へ運ぶウオークは筋力強化につながる

コロナ禍により、既に進みつつあったリモートワークに勢いが増し、人が移動することがなくても済ませられる方向に生活スタイルは変わりつつあります。私が代表を務めるニッポンランナーズの会員には、出社日でなくなったために、金曜夜に神宮外苑で行われるクラブの定期練習会に参加しにくくなってしまった方がいます。一方で、在宅勤務が増えたことで、走る時間を確保しやすくなった方も多くいます。

■ランニングは不要にあらず

走ることで仕事がはかどるということはよく耳にします。ランニングは不急のものかもしれません。でも、決して不要なことではありません。人の生活にとって大切な要素だと思います。

多くの方にとってデータや活字とのにらめっこが生活の大半となりつつあります。一方で身体の状況を把握する能力や、様々な状況をしなやかに乗り切る能力が衰えてきてはいないでしょうか。それらを補う方法の一つがランニングだと思っています。ランニングを習慣とし、キャリアを重ねていくと、走力の向上以外にも次のような恩恵がもたらされると私は感じています。

<距離感・時間感>

目的地までどのくらいで走れるか、自分が1時間で何キロ歩けるかについて、数字と感覚を一致させてイメージできます。「1キロが5分なら1時間=12キロ。フルマラソンなら3時間30分」などとすぐに計算できます。

<ルート作成力>

自宅を発着点として1時間で走るルートをイメージできます。右折、左折、その先にどんな道を選ぶのか、先を予測して走れる人が多くいます。

<体のパラメーターの把握>

このペースならば給水を取らずに、あとどれだけ走り続けられそうかと、自分の限界値を体で理解できます。

<状況判断や計画性>

人とのすれ違いや、危険の予測、回避が俊敏に行えます。給水を携えるのか、コース途中のあそこにコンビニがあるからそこをオアシスタイムにしよう、などと計画を立てられます。

<五感>

朝ランでは日が東から昇ることを感じ、夕ランでは日が西へ沈むことを視覚で捉えます。活字で理解するのではなく、目の前の事象を五感で捉えて認識しています。

ランニングを軸にした生活全般のマネジメントでコンディションを把握し、明晰(めいせき)な頭脳、思考の柔軟性、判断力が研ぎ澄まされると考えます。

■在宅ワーク型ランナーへの警笛

ランに割ける時間を確保しやすくなった一方、通勤や外回りで歩いていた時間が失われてはいませんか。自身の足で移動する時間のほかにも、立ち姿勢で細かい作業に従事するような時間が減少してはいないでしょうか。

一歩にかかる着地衝撃で考えると、ウオークは体重の1.5~2倍、ランは3倍といわれます。片方の足で地面を捉え、体を支えている時間(接地の時間)についてはランは「パンッ」と一瞬ですが、ウオークはそれより長くなります。衝撃が少なく、バランスを保ち、脚の筋肉を使って体をじっくりと前へ運搬することが、筋力強化につながるのです。

ベースとなるウオークや立ち姿勢で様々な作業に従事する。そんな重力と対峙している時間が日常の底辺に存在することで、衝撃が大きく高い負荷のランに耐える脚が培われるのです。記録向上を目指す方はさらにハイペースの高負荷ランへと丁寧に段階を踏み、走力を高めていく。そんな運動負荷のグラデーションでバランスを取ってください。

基礎体力やランに耐える脚の根幹であるウオークの要素が失われると、健康維持どころか脚がもろくなり、故障に陥りやすくなります。運動不足解消へ1日1時間走っているが、それ以外はずっと横になっている。こんな生活スタイルだったらどうでしょう。とてもいびつな印象を受けますね。

狩りをする動物を考えてみます。「じっとしている」ことと「走る(駆ける)」ことの間に位置する、縄張りの確認の風景を思い起こしませんか。私たち人間の目指す健康的な生活スタイルも、ああいった野性的な生活バランスに学ぶべきかと考えます。

■足の機能低下

骨盤から足先までを含めて「脚=leg」と呼びます。それに対してくるぶしから指先までは「足=foot」。足の着地から離地までの連続写真をご覧ください。地面から足の指が離れる際に指がしなっています。この機能が失われて力を地面に伝えられずに走っている方が多いです。日常的に歩いていない、性能の高いシューズに履き慣れてしまった、などを理由に足の指の機能が低下している方が増えてきていると感じます。

足の着地から離地までの連続写真。地面から離れる際に指がしなるのがポイント

足の着地から離地までの連続写真。地面から離れる際に指がしなるのがポイント

再起に向けて走り出した方へ、フォームの基本の習得を求めるつもりはありません。休み時間のたわいもない雑談などの余白的部分が省かれ、必須要素ばかりの息の抜けない仕事に追いやられている中、そこからくるストレスをリセットするためには、むしろ理屈など考えずに無心で走る方がよいと思っています。ただし、ランと並行して、歩く要素を生活に取り入れてほしいです。

例えば、こんなふうにやってみてください。

・ランの前に10~15分のウオークを取り入れる

・買い物などはなるべく足を使って移動する。あえてこまめに歩く癖をつける

・ウオークに専念する日を設ける。その際は、だらだらペースではなく、テンポよくピッチを上げて歩く

おすすめメニューに「スクワット1日600回」があります。任務中の約1週間は主に和室に閉じ込められ、外に出られないボートレーサーの方へアドバイスして功を奏した作戦です。「1秒に1回=60秒で60回」を隙間時間に10セット取り入れるよう心掛けたところ、故障しないことはもちろん、走力を維持することができました。

振り返ると3月の東京マラソンのころからコロナ禍を引きずっています。こんな時代でも、誰かのためでもなく、自分のため。1日の大切な時間として、ランニングを堪能してください。

さいとう・たろう
1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ、19年理事長に就任。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)、「ランニングと栄養の科学」(新星出版社)など。
「スポーツ」のツイッターアカウントを開設しました。

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