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波紋広がるApple対フォートナイト Q&Aでおさらい

(更新)
フォートナイトは世界で3億5000万人以上が遊ぶ人気ゲームだ(写真は2019年の米ゲーム見本市)

【シリコンバレー=佐藤浩実】人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米エピックゲームズと米アップルの訴訟の波紋が広がっている。エピックに同調してアプリ課金の仕組みに不満を示す企業や、ゲームの配信停止を超えた社会への影響を懸念する声が出てきた。両社の主張や訴状の内容を中心にQ&A形式でポイントをまとめた。

Q1.そもそもフォートナイトとは何か。

A.フォートナイトは世界の登録プレーヤーが3億5000万人を超えるオンラインゲームだ。「バトルロイヤル」と呼ぶ種類のゲームで、100人が同時に戦って最後の1人として生き残ることを競う。

SNS(交流サイト)やメディアの要素も備え、8月には歌手の米津玄師さんがゲーム内でコンサートを開いた。

最初のバージョンを公開したのは2017年。基本料金は無料で、ゲーム内でコスチュームなどを買う際に課金される。ソニーの「プレイステーション」や任天堂の「スイッチ」、米マイクロソフトの「Xbox」、パソコン、スマートフォンと幅広い端末で遊べるのが特徴だった。

Q2.運営会社のエピックゲームズとは。

A.最高経営責任者(CEO)のティム・スウィーニー氏が、大学生だった1991年に設立したゲーム会社だ。本社はシリコンバレーではなく東部ノースカロライナ州にあり、従業員は約2200人いる。

フォートナイトのような遊ぶためのゲームソフトと、ゲームの開発に使う「ゲームエンジン」と呼ぶソフトウエアが事業の二本柱だ。ゲームエンジンでは米ユニティ・ソフトウエアと競る大手で、多くのゲーム会社が開発に利用している。

2012年に中国の騰訊控股(テンセント)が3億3000万ドルを出資した。直近の出資比率は4割程度とみられる。

エピックのティム・スウィーニーCEOはかねてアプリ課金の硬直性を批判してきた(写真は2019年、米ロサンゼルスで)

Q3.なぜエピックはアップルを提訴したのか。

A.アプリ配信とアプリ内の決済でアップルが反競争的な行為をしているというのがエピックの主張だ。

具体的には、30%の手数料を取る「アップストア」を経由しないとアプリをiPhoneやiPadに配信できず、代替手段がない点を問題視している。ゲームのアイテムのようなアプリ内での課金にもアップルの決済システムを使わなければならない点も指摘しており、こちらも30%の手数料がかかる。

エピックは訴訟に先立ってアップルを介さない独自の決済システムを実際に導入し、フォートナイトの配信を止められている。8月13日にカリフォルニア州の連邦地裁に提出した訴状で、裁判を通じて「アップルの反競争的な行為をやめさせ、競争状態に戻すために必要なあらゆる措置を取るよう義務付けることを求める」としている。

さらにエピックは、同社の開発者登録を取り消そうとするアップルの対応についても「報復だ」と問題視した。規約違反をしていないゲームエンジンの事業にも影響が及ぶためだ。そこで17日には、フォートナイトの配信停止と開発者登録の削除に関する差し止め請求を出した。

エピックは自社でもゲーム配信サイトを運営し、手数料が12%と低い点を売りにしている。そのため「プラットフォーマーとして対抗している」との見方もある。

Q4.アップルはどう反論しているのか。

A.アップルは8月21日に初めて公式に反論した。アップルが裁判資料で強調したのは、エピックやフォートナイトはアップストアの仕組みのおかげで発展したという点だ。

アップルは同社が提供する開発ツールや、アプリを世界の端末利用者に届ける力をエピックが活用してきたと主張。にもかかわらず「お金を払わずに恩恵を受けたいと判断して契約を破棄した」と言う。提訴に至ったエピックの振る舞いは「自作自演」だと指摘する。

反トラスト法(独禁法)違反という訴えについては、エピックが市場の定義やアップストアと決済を「抱き合わせ」と見る根拠など「(エピックは)精緻な精査を一切していない」と主張する。フォートナイトはiPhone以外に多くの端末で遊べるにもかかわらず、独禁法違反の訴えでは「都合よく無視している」とした。

興味深いのは米クアルコムが米連邦取引委員会(FTC)との裁判で判事から引き出した発言を、アップルが引用したことだ。テクノロジー業界の商慣習は「引き起こした正確な害について精査することなく、不合理だから違法である、と推定されるべきではない」とした。

Q5.なぜ民間企業の訴訟がここまで話題になるのか。

A.世界的な人気ゲームのフォートナイトと、時価総額が2兆ドルを上回るアップルの戦いというのが一因だ。ただ、それだけではない複数の理由がある。ポイントは(1)共感(2)タイミング(3)物語性(4)インフラ――の4つだ。

(1)「アップル税」への反発で共感

エピックのスウィーニーCEOはかねて、アプリ配信・決済の硬直性を公に批判してきた。訴訟の内容もこれまでの主張と通じる。一方、公言せずとも心の中でアップルの規則に疑問や不満を持っていた開発者は少なくない。アプリ内課金が多いゲーム業界などでは30%の手数料を「アップル税」と呼んでおり、共感が広がった。

さらに、便乗して手数料の見直しを求める動きが出てきた。例えばオンラインイベントを開催できるシステムを提供する米フェイスブックは8月、アップルが参加費の30%を徴収していることを表示し始めた。中小企業の収入を増やすためアップルに手数料の減額を求めたが、拒否されたためだという。米メディア各社が参加する団体は、アップルがアマゾン・ドット・コムの手数料を15%に優遇している点に着目して減額条件の明示を求めた。

一方、アップルが個人の開発者でも世界でアプリを売れる仕組みを提供しているのは事実で、同社を擁護する意見も少なくない。

(2)米公聴会直後のタイミング

エピックが訴訟を起こす約2週間前の7月29日、アップルを含むIT(情報技術)大手4社は米議会下院の公聴会に招集された。各社さまざまな論点があるなかで、アップルのティム・クックCEOが追及を受けたのはアプリ課金をめぐる独禁法違反の疑いについてだった。

政官界含めて世の中の関心が高まった時期を狙ってエピックが訴訟を起こしたことで、一段と注目を集めた。クック氏は公聴会で「10年以上手数料を上げていない」と説明したほか、「不満を公にしたアプリ開発者に対して、報復やいじめはしない」とも証言していた。

米議会下院の公聴会で話すアップルのティム・クックCEO(7月29日)

(3)「挑戦者と支配者」の物語性

「劇場型」で展開した訴訟までの流れも関心を誘った。エピックはアップルを介さない決済システムが規約違反としてフォートナイトの配信を止められた数時間後、地裁に提訴するとともにSNSやゲーム内で1本の映像を流した。

フォートナイトのキャラクターが世界を支配する腐ったリンゴに戦いを挑むという内容で、支配者を米IBM、挑戦者をアップルとしていた往年のCM「1984」に重ねた。挑戦者が支配者になる姿を皮肉った映像は「ユーチューブ」で25日までに580万回再生されている。

エピックはSNSで訴状を公開しているほか、23日にはアップルとの戦いになぞらえたイベントもゲーム内で開催した。一定のポイントを取った参加者には今後、黒いリンゴのコスチュームが配られる。

「アップルとの戦い」を題材にしたイベントを23日に開いた

(4)ゲーム開発のインフラ

エンジン「アンリアルエンジン」の提供者としてのエピックの姿も、関心の裾野を広げた。ゲームエンジンは、ゲームを効率良く作るためのソフトウエアで、多くのゲーム開発者が活用している。いわばインフラだ。アップルがエピックの開発者登録を削除することで、同エンジンのサポートに影響が及ぶのではとの見方が広がった。

マイクロソフトのゲーム事業の担当者は急きょ裁判に参加し「アップルがエピックによる『アンリアルエンジン』の開発・サポートをやめさせると、ゲーム開発者やゲーマーに害を与える」と書面で説明した。開発のやり直しや中断を余儀なくされるためだ。同社もレーシングゲームの「フォルツァ」でエピックのエンジンを利用している。

ゲームエンジンは最近ではCG(コンピューターグラフィックス)を駆使する映画や番組制作にも使われており、こうした業界からも懸念の声が上がっていた。

Q6.これからどうなるか。

A.8月24日に連邦地裁は初めて口頭弁論を開いた。この日の主題はエピックが17日に出した差し止め請求に関してで、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事はフォートナイトの配信復活は認めない一方で、ゲームエンジンに関わるアクセス停止については「第三者に混乱をもたらすべきではない」として一時的に差し止めた。エピックは当面、継続して「アンリアルエンジン」の提供とサポートが可能になる。

ただこれはあくまで「前座」だ。独禁法違反を争う係争は長く続く見通しで、次回の口頭弁論は9月28日に開かれる。

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