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M&A 中国リスク台頭 キリン、豪州事業売却を断念

豪州政府はキリンが売却予定だったライオン飲料の中国企業による買収に難色を示した

キリンホールディングス(HD)が25日、オーストラリアの乳飲料事業の売却中止を余儀なくされた。豪政府は買い手の中国蒙牛乳業に「国益に反する」との見解を伝えた。香港への強硬措置や南シナ海問題に起因する世界的な中国への警戒姿勢が、キリンの事業再構築にとり想定外のハードルになった。

「提案された買収は国益に反するだろうとの予備的見解を蒙牛側に伝えた」。25日、豪州のフライデンバーグ財務相はキリンによる売却中止の発表後、こう明かした。

キリンが売却予定だったライオン飲料は同国内で乳製品や飲料を手がける。今回、豪政府は蒙牛による買収でどのような国益が損なわれるのか明示していない。

豪政府は過去、電力公社やパイプライン企業を対象に「国益に反する」として中国や香港の企業への売却を阻止したことがある。新型コロナウイルスの影響を受け、今年に入り外国投資に関する規制を強めていた。

3月には急激な株安を受け、買いたたきを防ぐための一時的な措置として、海外からのすべての投資案件について外国投資審査委員会(FIRB)の審査を義務付けた。従来は2億7500万豪ドル(約200億円)以下であれば審査は不要だった。6月には安全保障に関わる事業を対象に、審査を強化する方針も打ち出している。

春以降の両国の関係悪化のあおりを受けたのが、海外の低収益事業の売却を含めたキリンHDの事業再構築だ。今後はライオン飲料の売却額がキリンHDの求める水準に達するかが焦点のひとつになる。新型コロナウイルスの流行で、世界の飲料・食品業界は業績が悪化している。新たな買収提示額が蒙牛乳業を下回ることも考えられる。

新型コロナによる経済活動の停滞で、中国企業の「爆買い」への警戒感は各国・地域で高まる。インドは4月、中国を念頭に「国境を接する国」からの投資には認可が必要であるとの通達を出した。

中国民営自動車大手、長城汽車はインド西部にある米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場を買収して参入する計画だが、6月に中印両軍が国境付近の係争地で衝突すると、インド政府はこの投資の認可を保留した。

中国企業によるインドの有力スタートアップへの追加投資も認可待ちがあるもようだ。インドメディアによると、こうした保留は175件に上るという。

欧州連合(EU)も外国企業による域内企業の買収に関し、規制を強める方針だ。今後、企業のM&A戦略にも、予想外の「中国リスク」が影を落とす可能性がある。

(シドニー=松本史、早川麗)

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