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米、イスラエルとアラブの仲介加速 イランに圧力

イスラエルを訪問したポンペオ米国務長官は24日、ネタニヤフ首相と共同記者会見を開いた=ロイター

【ワシントン=中村亮、カイロ=久門武史】トランプ米政権がイスラエルとアラブ諸国の仲介を急いでいる。ポンペオ国務長官が中東を歴訪し、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)との国交正常化を固めた上で、他のアラブ諸国に早期の国交正常化を促す。イスラエルとアラブ共通の脅威であるイランへの包囲網を狭める狙いもある。

「中東地域を安定させて繁栄をもたらすだろう」。中東歴訪中のポンペオ氏は24日、エルサレムで会見し、13日に発表したイスラエルとUAEの国交正常化合意を改めて称賛した。「トランプ大統領の方針と完全に合致する」とも語り、和平協議を仲介した成果を強調した。

今回、ポンペオ氏が中東を訪問した目的は2つある。1つ目はイスラエルとUAEの国交正常化合意の調印式に向けた最終調整だ。

米メディアのアクシオスによると、UAEは先週に国連本部で予定していた米国とイスラエルとの3カ国会談を突然キャンセルした。最新鋭ステルス戦闘機F35を米国から購入する計画にイスラエルが反対したからだ。UAEは国交正常化合意でF35が調達できると考えていたとされ、会談中止でイスラエルへの不満を示したもようだ。

米政権は合意発表時に両国の代表による調印式を数週間以内にホワイトハウスで行うと説明している。ポンペオ氏は28日までにUAEも訪問し、F35を巡るイスラエルとの隔たりを埋め、一枚岩を演出したい考えだ。

2つ目の狙いは、他のアラブ諸国にもイスラエルとの国交正常化を促すことだ。25日以降に訪問するスーダンやバーレーンはいずれもイスラエルと国交を正常化するとの観測がある。複数の米メディアによると、中東和平担当のクシュナー上級顧問も9月上旬にアラブ諸国を訪問し国交正常化を促す見通しだ。

米政権は11月の大統領選に向け、代表的な支持基盤の一つであるキリスト教福音派への求心力を維持したい考え。福音派はイスラエルの安保を重視している。1948年の建国から対立関係にあるアラブ諸国との関係改善が進めば、福音派はトランプ政権を好意的に受け止める公算が大きい。

ポンペオ氏は25日、開催中の共和党全国大会でトランプ氏の再選を訴えるスピーチをする予定だ。エルサレムで録画した映像を流すと見られ、米政権の中東和平に向けた成果をアピールする見通しだ。

米政権の思惑通りにイスラエルとアラブ諸国の関係改善が進めば、中東の勢力図は塗り替わる。パレスチナ問題で長く対立してきたアラブ諸国に囲まれるイスラエルは孤立感が大きく和らぎ、偶発的な衝突のリスクも低下する。イスラエルのネタニヤフ首相にとっては国内の支持低迷に歯止めがかかる可能性もある。

一方、UAEはIT(情報技術)や医療などに強みを持つイスラエル企業の成長力を取り込み、脱石油の糸口をつかむ機会になる。イスラエルの対外情報機関の力にも利用価値を見いだしている可能性が高い。米国からさらなる安全保障協力を引き出すきっかけにしたい思惑も透ける。

イスラエルとアラブ諸国が共通の脅威とみなすイランへの圧力強化で連携する素地も生まれる。AP通信によると、サウジアラビアやUAEなどアラブ6カ国でつくる湾岸協力会議は8月上旬、国連にイランへの武器禁輸措置の継続を求め、米国やイスラエルと足並みをそろえた。

イランは特に主要な貿易相手であるUAEがいわば敵に回ったことに「重大な過ち」(ロウハニ大統領)だとして反発を強めている。イランは20日、UAE船1隻を領海侵犯で17日に拿捕(だほ)したと発表した。揺さぶりをかける構えは崩さないが、米国主導のイラン包囲網は中東で確実に狭まりつつある。

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