建設業界もDX 有力VCが注目する2つの技術 - 日本経済新聞
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建設業界もDX 有力VCが注目する2つの技術

労働集約型で作業者の経験やノウハウによる部分が大きく、アナログな印象がある建設業界。だがこの分野でもソフトウエアやロボットを活用し生産性を高めようとする建設テックスタートアップが増え、少しずつデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む。今回は建設テックの中でも投資マネーが集まるプロジェクト管理とドローン(小型無人機)活用の2つの技術分野を紹介する。

CBインサイツが選んだ世界の有力ベンチャーキャピタル(VC)のリスト「スマートマネーVC」(投資先の企業価値や投資成績に基づき選定)25社のうち、2015年以降に建設テックスタートアップに投資したのは17社に上る。

もっとも、15年以降のスマートマネーVCによる建設テックへの投資は安定していない。最も多かった15年の投資件数は13件だったが、18年はわずか4件に減り、19年にいくぶん回復した。

市場規模11兆ドルの建設業界ではDXが進んでいる。スマートマネーVCが商機とにらむ分野を明らかにするため、15年以降の建設テックでの投資状況を図に示した。

ここでは建設テックを、ソフトウエアやロボットなどのテクノロジーを使って建設プロセスをデジタル化し、自動化し、調整している企業と定義している。

(注)それぞれの線は1回以上の未公開市場での投資を表す。米プラングリッド(PlanGrid)、米ビルディングコネクテッド(BuildingConnected)、米アイアンプラネット(IronPlanet)、米エアーウエア(Airware)は他社に買収され、米スマートシート(Smartsheet)は上場した。米グーグル研究機関「グーグルX」から独立した米フラックスファクトリー(Flux Factory)は休業し、事業を転換した。

主なポイント

▽プロジェクト管理やドローンのスタートアップに投資

15年以降にスマートマネーVCの出資を受けた建設テックスタートアップは27社だった。「協業&プロジェクト管理」「ドローン」のカテゴリーの企業への投資が多かった。

「協業&プロジェクト管理」のスタートアップは現場データの収集・共有プロセスの改善を目指している。

例えば、米プロコア(Procore、累積調達額4億500万ドル)や米ランビックス(Rhumbix、4300万ドル)、オーストリアのプランレーダー(PlanRadar、3300万ドル)などのスタートアップは現場データの記録、現場の生産性のモニタリング、チーム同士のやりとりの解決策を手掛けている。

ドローンスタートアップもスマートマネーVCから注目を集めている。こうした企業はドローンを使って現場の上空からの情報を収集したり、原材料を配送したりする。

例えば、米ドローンデプロイ(DroneDeploy、9100万ドル)、米ケスプリー(Kespry、6100万ドル)、米ドローンベース(DroneBase、3100万ドル)は航空画像を収集し、高精度なモニタリングに使う地図や現場モデルを作製する。一方、米VCライトスピード・ベンチャー・パートナーズが出資する米ボランシ(Volansi、2000万ドル)は原材料を配送する自律飛行のドローンを開発している。

▽買収活動は、建設テックにおける既存企業の影響を反映している

15年以降にスマートマネーVCから出資を受けた建設テックスタートアップ27社のうち、既存企業に買収されたのは3社だった(買収された建設テックスタートアップは全体で4社)。

製造や建築、工業などで使うソフトウエアを設計する米オートデスクは、スマートマネーVCから出資を受けていたプラングリッドとビルディングコネクテッドを買収した。プラングリッド(米VCセコイア・キャピタルが出資)は建設データを収集・共有するクラウドベースのプラットフォームを提供している。一方、ビルディングコネクテッド(ライトスピードが出資)は、デベロッパーが下請け業者を見つけたり、競売を運営したりするプラットフォームを開発した。

産業機械のオークションを手掛けるカナダのリッチーブラザーズは16年、オンラインの建設オークションスタートアップ、アイアンプラネットを7億5900万ドルで取得した。アイアンプラネットには米VCのアクセルとクライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)から出資していた。

もっとも、買い手は既存企業だけではない。米VCアンドリーセン・ホロウィッツとKPCBが出資したエアーウエアの資産は仏ドローンスタートアップ、デルエアー・テックが買い取った。デルエアーは鉱業やインフラ、農業、建設プロジェクト向けに空からの情報を提供している。

▽建設テック投資は早期段階のスタートアップに集中

19年のスマートマネーVCによる建設テックスタートアップへの投資では、初中期段階のスタートアップ向けが72%を占めた。

これはプレハブ工法やドローンなど建設テックの技術や手段の多くがまだ採用されたばかりの段階にとどまることを反映している。

20年にはプレハブ工法を手掛ける初期段階のスタートアップ、米カバーテクノロジーズ(Cover Technologies)がシリーズAの資金調達ラウンドで米VCゼネラル・カタリストなどから1000万ドルを調達した。さらに、米VCユニオン・スクエア・ベンチャーズが出資するドローンベースはシリーズCで750万ドルを調達した。このラウンドにはスマートマネーVCのほか、ドローン世界最大手、中国のDJIなども参加した。

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