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ゼロから日本一へ 女子バスケ指導者・恩塚亨(上)

2006年誕生の若いチームが今、大学女子バスケットボール界を席巻している。昨年末の全日本大学選手権(インカレ)で3連覇を達成した東京医療保健大。監督の恩塚亨(おんづか・とおる、41)がゼロから築いたチームだ。

毎日の練習から映像クリップを作成する。渋沢栄一の名言も説くなど、選手を成長に導く努力を惜しまない

今でこそ全国から俊英が集うようになったが、創部時は未経験者を含めてわずか5人だった。授業優先で平日の全体練習が2時間と限られる中、13年に関東大学1部に昇格、17年にはインカレを初制覇した。恩塚の手腕は高く評価され、今は女子日本代表のアシスタントコーチも兼務する。

フォーメーションを網羅した著書があるなど引き出しは無数にあり、的確な分析力から「知将」とも評される。ただ豊富な知識はあくまで下敷き。最も心を砕くのは、コート上の5人が常に共通理解のもとで正しい選択をできるかどうか。そのカギを恩塚は「原則」「自己認識」と表現する。

例えば攻撃時。ボール保持者がドリブルで攻め込める状況なら、他の4人は近づかず、スペースを与えた方がいい。これが原則。では4人はどこに動けば、相手がより守りにくくなるのか。「全員の自己認識が正しければ常に優位性を保てる」。サッカー元日本代表監督の岡田武史が主体的なプレーを目指して構築した「岡田メソッド」に影響を受け、応用した考え方だ。

試合でノーミスはあり得ない。「でも原則から外れたらお互い注意でき、訳の分からない事故は減る」。精緻なプレーや連動性の積み重ねが、大舞台で勝負強さを生み出してきた。

むろん一朝一夕では浸透させられないから、手間暇は惜しまない。練習と試合は全て録画し、「常にクリニックのつもり」で毎日5~6時間かけて資料や映像クリップを作成。コート外でもベストセラー「7つの習慣」を読ませたり、渋沢栄一の名言から合理性の大切さを説いたり。あの手この手で鍛えられた選手たちは、4年間で見違えるほど変わるという。

代表格が今春卒業した永田萌絵(トヨタ自動車)だ。高い身体能力がありながら高校時代は無名。恩塚のもとで技術や判断力を身につけると、2年連続でインカレMVPを獲得した。3人制日本代表としても活躍するホープは「ずっと感覚だけでやっていたけれど、考えてプレーできるようになった」と振り返る。

昨年のインカレ決勝。接戦になったが、永田ら4年生主体のチームは堂々と原則通りのプレーを続けていたから、戦術の指示はほとんど出さなかったという。「これで自分の人生にも自信を持てると思う」。指導の成果を選手の人間性の成長につなげること。それは優勝、連覇といった結果と同じくらい価値があると信じている。=敬称略

(鱸正人)

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