横浜市のIR誘致表明1年、コロナで増す不透明感

2020/8/24 17:56
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横浜市によるIRの市民説明会も一部の区で未開催となっている(2019年12月)

横浜市によるIRの市民説明会も一部の区で未開催となっている(2019年12月)

横浜市がカジノを含む統合型リゾート(IR)の推進を表明し、22日で1年が経過した。新型コロナウイルスの感染拡大などで国や市の準備は大きく遅れている。林文子市長は2021年8月に任期満了を迎えるため、次の市長選の争点になる可能性もあり、先行きの不透明感は一段と強まっている。

「よりよい形でIRを推進していくため、8月とした公表時期を延期することにする」――。林市長は19日、IRの施設概要などを定めた「実施方針」の公表延期を表明した。市は4月、6月としていた公表のタイミングを8月に延期していた。再度の延期となり、今度は新たな公表時期を示さなかった。

林市長が延期の理由として挙げたのは大きく2点だ。一つが新型コロナの感染拡大を収束するための対応を優先するためで、もう一つが国が1月に示すはずだった「基本方針」が現在も出ていないことだ。

林市長は19年8月、少子高齢化や税収減に対応するための方策の一つとしてIR誘致を表明。海外のIR事業者は相次ぎ横浜での事業参入の意向を示し、コンセプト募集(RFC)には事業者7者が名乗りを挙げた。市も同年12月から誘致予定地の中区や、近隣の西区などで住民説明会を進めてきた。

ただ、誘致環境は変わってきた。同月にはIRをめぐる汚職事件が判明。新型コロナの感染が世界的に拡大し、シンガポールやマカオ、米ラスベガスなどの海外のIR施設は軒並み休業を余儀なくされ、事業者の経営環境は悪化した。大阪府・市が目指すIRへの参入を見送り「東京と横浜に注力」としてきた米大手のラスベガス・サンズも5月に進出断念を決めた。

誘致に反対する市民団体「カジノの是非を決める横浜市民の会」は22日、候補地の山下ふ頭の近くで反対集会を開催。主催者発表で800人がプラカードを手に「カジノを断念せよ」と気勢を上げた。市民団体は9月、IRをめぐる住民投票条例の制定に向けて署名活動を始める計画だ。

3期目の林市長は任期満了を21年8月に迎える。国への申請期間がずれ込めば、市長選の争点となる可能性もある。IRに反対する市議は「コロナでIRのビジネスモデルが崩れた」と勢いを強める半面、「日本のIR開業は当分先で、その頃にはコロナも落ち着く。インバウンドの集客などで、将来的には横浜に有用だ」と話す市議もいる。

市のIR誘致に賛同する地元経済界も、観光関連などを中心にコロナの影響が次第に大きくなっている。IR誘致の態度を明確にしていない東京都などの動向次第で、IR事業者の横浜への投資意欲に影響を及ぼす可能性もある。

「IRの開業時期はかなり遅れると思う。しかし事業者も手を下ろさないということは、(IRが)コロナ後の有力な経済回復のひとつになると考えているはず」。林市長はこう強調する。

市は守秘義務にもとづき、事業者との折衝内容などは明らかにしていない。市民団体などの反対が根強いなか誘致作業を続けるためには、国への申請にあわせ誘致の必要性や意義を改めて明らかにし、理解を求めていくことが欠かせない。

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