今は雌伏の時 強豪レイズで筒香に限られたチャンス
スポーツライター 杉浦大介
レイズと2年1200万ドルの契約を結び、今季にメジャーデビューを飾った筒香嘉智が序盤戦は苦しんでいる。8月21日のブルージェイズ戦で2打数2三振に終わった時点で、打率.188と低迷。時速90マイル台後半を計測する高めの速球に力負けする姿が目立ち、ストライクゾーンにもやや戸惑っている印象がある。13日、ボストンでのレッドソックス戦の試合前には筒香自身も「もちろんスピードが違うし、ボールの強さも違う」とメジャーの投手レベルの高さを認めていた。
苦しい序盤戦の中でも、ハイライトシーンがなかったわけではない。7月24日に迎えたブルージェイズとの開幕戦では、昨季14勝を挙げた柳賢振から初本塁打。その後、8月13日のレッドソックス戦では2安打2打点、16日のブルージェイズとのダブルヘッダー第2戦では本塁打を含む2安打3打点を挙げるなど、随所に存在感は示してきた。
■才能は光るも安定して成績を残せていない
3本塁打のうち2本は左中間にたたき込んだもので、反対方向にも長打が打てるパワーはメジャーでも魅力。本人も左翼の頭を越える打球を2本打った16日の試合後は、「あそこに出ているのはいい傾向かな」と述べていた。
ただ、こうして活躍する日もあるが、まだ安定して数字を残すには至っていない。ア・リーグ東地区で首位を争うチーム内でなかなか起用法が定まらないことも、リズムをつかむのを難しくしている一因なのだろう。
最近でも16日までの4戦では合計12打数5安打2本塁打7打点と上り調子に見えたが、続く18日のヤンキース戦で4打数無安打。すると、19、20日のゲームではスタメンから外され、代打でも出番はなかった。
再び先発に戻った21日のブルージェイズ戦では、最初の2打席で三振すると、左投手が出てきた場面ではその時点まで対左には打率.375(16打数6安打)を残していたにもかかわらず代打を告げられてしまった。まずは場数を踏み、メジャーの投手の球に少しでも多く触れたい1年目。このように出場機会が不安定では、波に乗るのが難しいのは事実に違いない。
■優勝狙うチーム、オーダーはコロコロ変わる
もっとも、昨季96勝を挙げ、今季は優勝を狙うレイズに入団した時点で、このように起用されることはある程度予想できたことではあった。選手層の厚さに定評のあるチーム内で、レギュラーにほぼ固定されているのはブランドン・ロウ、ウィリー・アダメス、ヤンディ・ディアス、オースティン・メドウズなどごく一部。あとは相手投手や戦術によってラインアップが変わるのが恒例で、限られた出場機会の中で結果を出さなければいけないのは筒香だけではない。そして、そんな現状をよく理解した筒香も、もちろん言い訳はしていない。

「(起用法は)レイズのデータとかそういうものに基づいてやっていること。僕は監督、首脳陣から試合に出ると言われたら、そこで良いパフォーマンスができるようにするだけだと思っています。日本でもレギュラーを取る前はそういう経験もありました。ここ数年はそういう経験はなかったですけど、それは僕が決められることではないので、出た時には全力を出し切ろうともうそれしか考えていないです」
■短いシーズンは時間との闘い
そう決意を述べる筒香は、今後、首脳陣にレギュラー起用を納得させるだけの打棒を見せられるかどうか。
新型コロナウイルスのためにわずか60試合の変則シーズンとなった今季は時間との闘いでもある。条件的には容易ではないが、選球眼のよさとパワーを秘めた筒香は環境に慣れるにつれて力を出すタイプのように思える。
今は我慢の時。なんとかストライクゾーンとメジャーの球筋に慣れていきたい。このまま経験を積み重ねていけば、プレーオフ進出が有力なチーム内で、力を発揮するチャンスはいずれ必ず訪れるはずだ。