EU、英とのFTA「合意の可能性低い」 交渉難航続く

【ロンドン=中島裕介】欧州連合(EU)を離脱した英国とEUは21日、自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る7回目の交渉を終え、依然として目立った進展がなかったと表明した。EUのバルニエ首席交渉官は同日のブリュッセルでの記者会見で、両者が目指す年内のFTAの合意について「現段階で可能性は低い」と語った。
英側のフロスト首席交渉官は交渉後、「EUとの合意はまだ可能だが、達成が容易でないことは明らかだ」と述べた。
夏季休暇開けの7回目の交渉は夕食会も含めて18~21日にブリュッセルで対面形式で行われた。主要な対立点の「英海域でのEU加盟国の漁業権の扱い」や「公正な競争の確保」については、今回も溝が埋まらなかった。交渉関係者によると、英政府は行き詰まりの打開のためにFTAの草案をEUに提出したが、対立点の突破口にはならなかったもようだ。
一方でEU側はエネルギー分野や資金洗浄への対応での協力に関しては、一定の進展があったと説明した。バルニエ氏は記者会見で、合意しても欧州議会などでの承認が必要なことから、10月末に法的な合意文書が必要だと強調した。そのうえで英側に譲歩の姿勢がないことを非難し、「貴重な時間を無駄にしている」と訴えた。
英側のフロスト氏は交渉後の声明で「自国の法律、国境、海域の主権を確実に取り戻す」とEU離脱の目的を改めて説明した。「EUがこの現実を受け入れれば、進歩が容易になる」と妥協しない姿勢も明確にした。
交渉は関税ゼロでの貿易の継続など、EU加盟時に近い水準のFTAを結べるかどうかが焦点だ。決裂すればEU離脱の移行期間が切れる2021年初めに急に関税などが発生し、経済活動が混乱する恐れがある。