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バド黄金ペア「タカマツ」 葛藤の末に「やりきった」

19日のオンライン記者会見で現役引退を表明する高橋。奥はペアの松友=アフロスポーツ/日本ユニシス提供・共同

日本バドミントンを支えてきた黄金ペアが解散の時を迎えた。女子ダブルスで2016年リオデジャネイロ五輪金メダルの高橋礼華(30、日本ユニシス)が19日、8月末での現役引退を発表した。栄冠から一転、この4年間は次々と台頭する後輩たちとの激しい代表争いに苦戦。東京五輪が延期となり「あと1年、自分の気持ちと体が持つか不安だった」と語り、選考レース終了を待たずしてパートナーの松友美佐紀との13年にも及ぶ「タカマツ」ペアに終止符を打った。

競技人生に「悔いはない」と言い切る。だが、五輪連覇を目指す中で葛藤の多い4年間だったのだろう。19日のオンラインでの記者会見。東京五輪への道のりの思い出を問われると、高橋は時折言葉をつまらせながら語った。「4年間で世界選手権では1回しかメダルを取れなかったのが引っかかる。選考レースが始まってからは思うように結果が出せなかった。勝つことが当たり前ではないと改めて実感した」

リオデジャネイロ五輪のバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得した高橋(右)と松友=共同

19年は特に苦しいシーズンだった。4月末の代表選考レース開幕後、タイトルは一度もなし。8月の世界選手権準々決勝では中国ペアと2時間以上のロングゲームの末に惜敗し、表彰台を逃した。

国際大会を含む4連戦の最終戦となった11月下旬からの全日本総合選手権では準決勝で敗退。「4週間戦ってやっと終わった。ほっとしている」。負けた悔しさよりも先に安堵の言葉が口をついた。当時29歳の高橋と27歳の松友の体を疲労がむしばみ、代表切符は手の先から離れようとしていた。

4年前、2人の強さは群を抜いていた。代表選考レースを全体1位で通過し、堂々の世界ランキング1位でリオ五輪を迎えた。前衛の松友の球さばきと、後衛の高橋の強打という攻守で統制の取れたコンビネーションは、窮地の場面でも揺るがず力強い。決勝では終盤の5連続得点で劇的な逆転優勝をおさめた。

ただ、年月により少しずつ進む体の衰えにはあらがえなかったか。以前、所属先の早川賢一コーチは「全体的に動くスピードが落ちた」と指摘していた。2人が得意としてきた守勢から攻勢への切り替えが遅くなり、ラリー戦はより長期化。「決定力が減ってしまうのは女子ダブルスでは致命的。毎大会で1回戦からしんどい状態が続き、連戦を勝ちきるのが難しくなった」

闘争心も揺れ動いた。練習では「集中はしているが、リオ五輪前のように、ゾーンに入るような追い込みに欠けていた」と早川コーチは言う。17年12月に五輪連覇への決意を固めた後も、18年世界選手権の3回戦敗退など、早々と負ける姿がぽつぽつと続いた。

おまけに大会数は4年前より年間で5つも増え、対戦相手はよりいっそう同じような顔ぶれに。無我夢中で頂点へと上り詰めたリオ大会までのような熱量を取り戻すことは難しかったのかもしれない。

2019年7月、バドミントンのジャパン・オープンでプレーする高橋(上)、松友組=共同

そんな「タカマツ」が久しぶりに輝きを放った試合があった。今年3月の全英オープン。準々決勝で世界ランク1位の中国ペアをフルゲームの末に撃破したのだ。力とスピードで攻めたてる相手に対し、熟練のコンビネーションで上回る姿は、往年の2人そのものだった。

19日の会見で、高橋はその時のプレーの裏側をこう明かした。「試合の2時間前ぐらいに、大会後から(新型コロナウイルスの影響で代表選考)レースが中断になると聞いて、『もしかしたら最後の試合になるかも』と思った。それなら勝っても負けても悔いなく2人の力を出し切って終わりたかった」

だからこそ大会後、帰途についた高橋の心には自然と一つの答えが出たという。「やりきった。悔いはない」

世界ランク7位にいながら決断したペア解散。かつてなら悠々と五輪切符をつかむことができる順位でも代表争いに苦しむほど、この4年間で日本の女子ダブルスのレベルは格段に上がった。2位の福島由紀、広田彩花組(丸杉Bluvic)、3位の永原和可那、松本麻佑組(北都銀行)はいつもこんな言葉を口にしてきた。「タカマツペアがいたから、私たちもできると思った」

後輩たちの成長は2人にとっても誇りだろう。「自分たちが五輪で金メダルを取ったおかげで『私たちも』となってくれたのはバドミントン界にとってすごくうれしいこと」と高橋はほほ笑む。黄金ペアはまもなく戦線を去る。だが、2人の残した功績は永遠に記憶に刻まれ、バトンは次代に引き継がれていくはずだ。

(堀部遥)

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