バイデン氏「同盟国と協力」、国際協調で脅威に対抗

【ウィルミントン(米デラウェア州)=永沢毅】米民主党の大統領候補のジョー・バイデン前副大統領(77)は20日の党大会で指名受諾演説に臨んだ。正式な候補となって初の演説で「同盟国や友好国と協力する大統領になる」と宣言した。外交・安全保障政策で国際協調を重視し、脅威に対抗する方針を示した。
ドナルド・トランプ大統領(74)が進める同盟関係を軽視し、単独行動が目立つ「米国第一」路線を転換する考えを鮮明にした。バイデン氏は「独裁者に取り入る日々は終わったと敵国に明確に示す」と語った。トランプ氏が中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長らとの個人的関係を誇示してきたのを意識した。
トランプ氏が関心を寄せない人権問題も「人権と尊厳のためにいつでも立ち上がる」と力説し、香港情勢やウイグル問題を念頭に中国をけん制した。民主党は先に採択した政策綱領で、中国による香港の自治侵害などを巡って中国政府の高官などへの制裁に積極的に取り組む方針を打ち出している。
トランプ氏が進めた大規模減税の打ち切りなど多くの分野で「脱トランプ」を強調したバイデン氏だが、共通点もある。雇用創出に向けた米国への生産回帰が一例だ。演説では、新型コロナウイルスへの対応に欠かせない医薬品や防護具の生産を「自国で進める」と力説。「米国民を守るために再び中国や他国に頼ることは決してない」と訴えた。
政権奪還には白人労働者層の支持獲得がカギを握るため、製造業の米国回帰はトランプ氏も重視してきた分野だ。バイデン氏は再交渉の可能性もあるとしてきた環太平洋経済連携協定(TPP)にも演説では触れず、貿易面ではトランプ氏と同じ「内向き志向」をにじませた。
中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれていた民主党大会は20日、4日間の日程を終えて閉幕した。バイデン氏は現地入りせず、地元の東部デラウェア州ウィルミントンの会議場で演説に臨んだ。新型コロナの感染拡大を防ぐため支持者は会議場内には招かず、オンラインを通じて「私たちは結束すれば、この暗闇の季節を克服することができる」などと呼びかけた。