豊田の茶を世界へ 製茶業営む石川龍樹さん
中部ひと

2020/8/21 11:20
保存
共有
印刷
その他

トヨタ自動車が本拠を構え、ものづくりの街で知られる愛知県豊田市。同市内の標高約650メートルの山間地には広大な茶畑が広がる。ここで製茶業を営む「いしかわ製茶」の石川龍樹さん(41)は豊田の茶の魅力を世界に伝え続けている。

石川さんが有機栽培する茶葉は高品質で海外でも評価されている

石川さんが有機栽培する茶葉は高品質で海外でも評価されている

祖父の代から続く茶畑農家の長男として育った。自動車関連企業で働く家庭が多い中、軽トラックで茶を運ぶ父の姿を見て、子ども時代は家業にネガティブな印象を抱いていたという。

大学時代にボクシングのプロテストに合格。ボクサーとして活動を続けるか迷っていた時期に家業を手伝い、生産から販売まで一手に手がける農家の面白さに気づく。「責任を伴うが、やりがいも大きい。販売先からの『おいしい』という言葉が何よりうれしかった」。卒業後の2004年、跡を継ぐことを決めた。

茶の名産地として、静岡県や京都府を思い浮かべる人が多いだろう。知名度が高いとはいえない豊田の茶だが、品質の高さは折り紙つきだ。その理由は立地。市内の山間地は冬の冷え込みが厳しいため害虫が死滅しやすく、農薬を使わない有機栽培ができるという。

記録によると、当地では少なくとも江戸時代には旧刈谷藩のもとで盛んに茶が栽培されていた。祖父は他の農家とともに90年ほど前から栽培を始めたという。自社で生産した茶葉は、1978年に茶木を植え付けてから現在まで農薬を一度も使っていない。昼夜の寒暖差が大きいことで香りが引き立つのも特徴だ。

「豊田の茶の魅力をもっと伝えられないか」。10年前から海外市場に目をつけ、世界中のカフェや食料品店を飛び回り、試飲会や商談でアピールを続けた。地道な営業が功を奏し、同社の19年の年間輸出量は325キログラムと18年から1.5倍に増えた。現在は販売の1割が海外向けだ。

今春には全国農業協同組合中央会(JA全中)などが主催する19年度の日本農業賞個別経営の部で、最高位の大賞を受賞した。品質の高さに加え、豊田の茶を世界に広げたことが受賞理由となった。

海外に軸足を移すなか、新型コロナウイルスの拡大は思わぬ打撃だ。感染リスクへの懸念で初夏の茶摘みの実施が危ぶまれたが、人と人との間隔を取るなど感染防止対策を徹底。トヨタグループのボランティアの協力も受け、どうにか収穫できた。コロナ禍で海外販売は逆風も吹くが、各国の取引先の多くは購入を続けてくれている。「良いものは買ってもらえる。どこにも負けない品質を訴えていきたい」と力を込めた。

文  小野沢健一

写真 上間 孝司

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]