プロ注目球児 コロナ禍の制約下、光ったたくましさ
明石商(兵庫)の中森俊介投手や来田涼斗外野手、履正社(大阪)の関本勇輔捕手や小深田大地内野手ら、今年の関西高校球界にはプロが注目する3年生の逸材がそろう。17日まで甲子園で開かれた高校野球交流試合と各都道府県の独自大会では、新型コロナウイルスの影響で練習を十分に積めない制約があった中でも奮闘を見せた。不遇を乗り越え、たくましさを身にまとうこの世代は将来、どのような輝きを放つのだろうか。

明石商は交流試合に16日、登場した。桐生第一(群馬)との対戦で先発した中森は、ドラフト上位候補との評判通りの投球をみせた。三回にはこの日最速の150キロを計測。宝刀のスライダーは曲がりの鋭さが際立っていた。
ただ、「徐々に下半身の粘りがなくなった」と振り返った通り、球威と制球力が落ちた終盤に2失点(七回と九回にそれぞれ1失点)。「完封したらプロに行く自信になると思って臨んだが、9回2失点。まだまだ力不足を感じた」と今後の進路への迷いも口にした。
終盤の失速に実戦不足の影響を感じさせたが、中森は「交流試合が決まってから(調整への)時間はあった」と否定した。難しい状況に置かれていたことを言い訳にしなかったところに、つらい経験をしたこの世代の強さがのぞいた。
履正社の関本も大阪府の独自大会の序盤は不振に悩んだ。2日(3回戦)の四條畷戦では序盤と中盤の好機で凡退、こちらも実戦不足の影響を感じさせた。7日(5回戦)の関大一戦では4番から外されたことに奮起し、3安打2打点とようやく本領を発揮し始めた。
父は1997~2015年に阪神でプレーした賢太郎氏。身長186センチの恵まれた体を生かした長打力の一方で、1試合4犠打のプロ野球タイ記録も持つ器用な選手だった。息子も関大一戦では犠打をきっちりと成功させ、現役時代の父をほうふつさせる巧みな右打ちも披露。息子は「父の血が入っているんで」と笑った。
15日の交流試合、星稜(石川)戦では強肩で3盗塁刺をマークし、捕手としての能力をアピール。「甲子園では自分が投手を引っ張るという気持ちだった」と話した通り、主将として名門をまとめ上げたキャプテンシーも備える。
「(コロナで)野球ができる環境が当たり前ではなくなり、人に感謝する気持ちを再確認した」と関本。若くして人生で何よりも大切なことを学んだのがこの世代の一番の強みだろう。次のステージで羽ばたく力になるはずだ。
(田村城)