スー・チー氏、少数民族と協議 総選挙念頭に和平探る
【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーの首都ネピドーで19日、政府と少数民族武装勢力の恒久和平を探る代表者の協議が始まった。事実上の政府トップ、アウン・サン・スー・チー国家顧問は同日の開会式で今後の議論の土台ができたと指摘。11月の総選挙に向け政権の実績を強調したが、会議開催は2年ぶりで和平の歩みは遅れている。

会議は独立運動の指導者だったスー・チー氏の父が独立前の1947年に実施した少数民族との対話にちなみ「21世紀のパンロン会議」と呼ばれる。前回は2018年7月に開いた。当初は半年に1回開く方針だったが、少数民族側の武装解除や権益の分配などを巡る調整に手間取っていた。

スー・チー氏は「以前は考えられなかったような合意に(少数民族側と)至ることができた」と話した。最終日21日には今後の和平交渉の指針を示す文書に政府と少数民族側が署名する予定だ。
文書には、停戦協定に未署名の武装勢力との交渉や、軍政下で制定された現行憲法の改正に向けた議論などを盛り込む。
ミャンマーでは48年の独立以来、国軍と複数の少数民族の間で武力紛争が続く。今回の和平会議には、政治対話への参加を条件に停戦する「全土停戦協定」に応じた10の武装勢力と政府・国軍が参加。民族自治権に配慮する将来の連邦体制の実現に向け協議した。
スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は和平推進を掲げて15年の総選挙で大勝したが、少数民族側は協議の遅れに不信感を強めている。
現行憲法で国軍の政治力は強く、スー・チー氏でも抑えきれない。同氏が人口の7割を占めるビルマ族の出身で、多数派の利益を代表しているという見方も少数民族側にはある。スー・チー氏はそうした逆風を感じており、総選挙では少数民族の有権者の離反をなるべく抑えようとしている。
スー・チー氏には難題が残る。今回の会議は全土停戦協定に未署名の武装勢力が参加を見合わせた。政府がテロ組織に指定した西部ラカイン州の武装勢力「アラカン軍」が招待されず、同盟する勢力が反発した。
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