俳優・松尾諭が「拾われた」半生をエッセーに

文化往来
2020/8/26 2:00
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カラフルな表紙画も自分で描いた

カラフルな表紙画も自分で描いた

自動販売機の前に落ちていた航空券を拾ったことから始まった俳優生活。映画やドラマで活躍する売れっ子、松尾諭の自伝風エッセー「拾われた男」は借金地獄や酒に溺れた日々、オーディションに落ち続け女性にはふられ続ける、と波瀾(はらん)万丈のエピソードが面白おかしくつづられる。

フィクションも含むが「9割くらいは本当の話」という。「俳優が素を出し過ぎるのは良くないと思っている。あと自伝というのは恥ずかしいから」という理由で「自伝風」とした。

書くきっかけは、飲み会の席で文芸春秋の編集者と一緒になったこと。「何か書きませんか?」とふいに言われ、「40歳を超え、やれることは何でもやりたいと思っていた」と引き受けた。編集者によると、実際は松尾から「書かせてほしい」と言ったのに本人は覚えていないそう。文芸誌「文学界」で掲載したエッセーが好評で、電子雑誌「文春オンライン」での連載、書籍化につながった。

印象的なエピソードは事務所との契約にこぎ着けたきっかけだ。自販機の前で航空券を拾って交番に届け、「お礼を希望する」の欄に丸をつけた。すると、落とした相手が老舗のモデル事務所の社長で、その縁で事務所に入れてもらったことが今の芸能活動につながった。

小さい頃からよく物を拾う子で、道ばたに落ちているいろんな物を拾ってきては「ガレージに置いた袋にためていた。好奇心は大事、面白そうやなと思って何でも拾ってみる」と振り返る。

原稿の中で役者論を語りそうになったが「あかん、そんな偉そうなこと、とできるだけ省いた」と明かす。妻にも話を聞きながら書き、原稿を渡すと「リビングで爆笑したり号泣したりしながら読んでくれたのがうれしかった」と照れ笑いを浮かべる。

東京・表参道の街並みに自身がたたずむカラフルな表紙画も自分で描いた。「枕代わりにして、気になったら読んでもらえたらいい」。人生は「この道しかないということはない。これがだめでもほかもあるという気持ちで余裕を持って」と読者にメッセージを送る。

(光井友理)

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