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触れて学ぶ芸術 模索の夏 音楽や演劇 コロナ下の体験会

文化の風

学生はプロの奏者や作曲家と相談しながら曲を完成に近づけてゆく(大阪市のいずみホール)

コロナ禍の影響で例年より短かった夏休みも終盤。音楽ホールや劇場、美術館が毎夏打ち出す家族連れや学生向けの体験型企画は、軒並み中止や変更を余儀なくされた。しかし、次代を担う世代への教育的な企画は感染防止策を徹底したうえで実施されている。

「コロナ下で生演奏の価値が再認識された。指導の場でもそれは同じ」。現代音楽の作曲家、川島素晴は学生たちを前に強調する。いずみホール(大阪市)は川島が学生に指導する作曲講座を7月上旬から開催。体験型企画の多くが中止となるなか、川島の強い要望もあり開催に踏み切った。

■実演が耳を育てる

 受講者は全国の音大や芸大、音大付属高校で作曲を学ぶ学生5人。あらかじめ作曲した曲をホール専属楽団のいずみシンフォニエッタ大阪の奏者6人が演奏。奏者らと川島の助言を得て曲を完成させる。

感染防止策として、会場をリハーサル室からホールに変更。指揮者や奏者はマスク着用で距離を確保し、管楽器奏者の前にプラスチックの透明板を設置するなど対策を徹底した。川島は「ホールは耳を育てる場。実際の曲の響きを確認できる」と前向きに捉える。

学生らは普段から多くの譜面を読み込むが、実演の経験は乏しい。譜面上では可能そうでも演奏できない曲を作る傾向がある。「コロナで音楽の場がネットにシフトしたが、ネットではできないこともある。演奏してこそ理解できることは多い」と川島は言う。

身体を使い創造

 ロームシアター京都(京都市)はコンサートなど不特定多数が参加する夏恒例の企画を無料ネット配信に切り替えた。一方、中高生向けの体験企画「劇場の学校」は感染対策を徹底して対面で実施。「身体を動かし他人と共に創るプロセスはオンラインでの代替が難しい」(ロームシアター)

身ぶりを交えて幽霊が現れるエピソードを実演する参加者(京都市のロームシアター京都)

7月下旬から5日間行われた演劇コースは約20人の中高生が集まり、劇作家の岡田利規と「幽霊」を題材にしたパフォーマンスを制作した。参加者からは「今は演劇の部活さえも難しい。こういう場があってうれしい」との声もあった。

合計16時間のコースで取り組んだ課題は「自分の頭の中にある想像(=幽霊)を今ここにあるものとして伝える」。「現実の自分の家を他の参加者に説明する」という課題から「他の参加者の家を自分の家のように説明する」と、徐々にフィクションの度合いを強め、最終日に幽霊が登場するエピソードを発表した。見学した保護者からは「実際に体験したこと?」との驚きの声も聞かれた。

「世界の見え方が一変する体験。コロナ禍で誰もが体験したことでもある」と岡田。「プロの俳優が対象のワークショップと同じ内容。演劇とは何か、という根源に通じる難しい課題に楽しく取り組んでくれた」と手応えを語った。

和歌山県立近代美術館(和歌山市)は毎夏「なつやすみの美術館」と題し企画展を開いてきた。10回目の今夏、和歌山出身の画家、田中秀介の作品に同館所蔵品を交えた「あまたの先日ひしめいて今日」展を開催中だ(30日まで)。

例年なら和歌山市内の中学生が団体で来館し、ワークシートを完成させるが今年は中止。代わって、その辺で拾った小石に各人が思いを込めて文字を書き込みネットに投稿する企画「もより石」を実施中だ。同館の奥村泰彦教育普及課長は「来館しなくても美術には触れられる」と話す。

音楽、演劇、美術の各分野とも多くの来場者が見込める企画は中止しても、次代の人材を育てる工夫は続けている。コロナ下で敢行した地道な取り組みはいずれきっと実を結ぶはずだ。

(佐藤洋輔、山本紗世)

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