ハリス氏、「オバマ路線」訴え 公的医療保険の拡充強調

米大統領選
2020/8/20 16:30
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19日、米民主党の副大統領候補に指名されたハリス上院議員は「トランプ大統領の指導力の欠如で生命や生活が犠牲になった」と批判した(東部デラウェア州)=ロイター

19日、米民主党の副大統領候補に指名されたハリス上院議員は「トランプ大統領の指導力の欠如で生命や生活が犠牲になった」と批判した(東部デラウェア州)=ロイター

【ワシントン=中村亮】米民主党は19日、開催中の全国大会でカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に正式指名した。ハリス氏は指名受諾演説でトランプ大統領の新型コロナウイルス対策を痛烈に批判し、公的医療保険を拡充すべきだと訴えた。オバマ前大統領の路線を踏襲する形で、人種差別根絶も強調して黒人層の投票率向上も狙う。

「遠隔授業に困惑している親や、画面の反対側で困り果てている教師であれば現状がうまくいっていないことはお分かりでしょう」。ハリス氏は演説で、トランプ政権のコロナ対策が機能していないと強調した。「ドナルド・トランプの指導力の欠如で生命や生活が犠牲になった」とも断じた。

代わりに「私たちに投票すれば医療保険へのアクセスを拡充し、労働者家庭が確実にちゃんとした生活を送れるようになる」と訴えた。民主党は希望者が誰でも加入できる公的医療保険の新設を公約に掲げる。米国では高齢者向けの公的医療保険「メディケア」と低所得層向けの「メディケイド」があるが、これらに含まれない層を救済する構想だ。

ハリス氏の考えは「医療保険制度改革法(オバマケア)」を成立させて無保険者の減少を狙ったオバマ前大統領の路線に沿ったものだ。米国では雇用主が医療保険を提供するのが一般的だが、コロナによる失業で無保険者が急増しており有権者の間では医療への関心が高まっている。ただ財政を圧迫する過度な公的保険拡充は増税につながる恐れがあり、穏健派の支持が離れるリスクもある。

ハリス氏は演説の多くの時間を人種差別根絶に充てた。インド系移民の母親とジャマイカ系の父親のもとに生まれたハリス氏は、幼少期からマイノリティーの権利向上を目指す両親の公民権運動に影響を受けてきた。

ハリス氏は演説でコロナがマイノリティー層により大きな悪影響をもたらしているとし「これは偶然ではない。構造的な人種差別によるものだ」と指摘した。「人種差別に対するワクチンは存在しない。この問題に正面から取り組む」とも強調した。こうした主張も黒人初の大統領となったオバマ氏に通ずる。

民主党系の政治コンサルタントのマーク・ロングバウ氏は、ハリス氏は高齢者層に強いバイデン前副大統領を補完する形で黒人や若者などに対して支持を訴える役割を担うと指摘する。共和党ではペンス副大統領が保守派白人の支持固めに注力しているのに似た役割だ。

副大統領候補への指名は、ハリス氏が民主党の将来を担うリーダーの一人として認められたことを意味する。バイデン氏が勝利すれば2021年1月の就任時には78歳。就任時としては最高齢となるため24年の大統領選には出馬しないとの観測がある。そうなればハリス氏が有力な後継者として、初の女性大統領を狙う立場になり得る。

米国では副大統領が大統領に昇格した例が9回ある。1841年にはウィリアム・ハリソン大統領が就任1カ月後に死亡。ジョン・タイラー副大統領が急きょ昇格したようにハリス氏が突然大統領職を任される可能性もゼロではない。

ただ政権奪還には課題も残る。CNNテレビが12~15日に実施した世論調査では「きょう投票があれば誰に票を投じるか」との質問に対して50%がバイデン氏と回答し、トランプ氏を4ポイント上回った。ただ6月上旬の調査ではバイデン氏が14ポイントリードしており差が大きく縮まった。ハリス氏の副大統領起用が好影響を生んでいない可能性がある。

「彼女はバイデン氏のことを人種差別主義者と呼んでいなかったか??? 彼を無能だと言っていなかったか???」。トランプ氏はハリス氏の指名受諾演説後にツイッターにこう書きこんだ。ハリス氏は民主党の大統領候補の指名争いでバイデン氏を痛烈に批判したことがあり、トランプ氏はハリス氏の矛盾を追及する構えだ。

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