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体は本当に柔らかくなる? プロ指南のストレッチ効果

中野ジェームズ修一のカラダお悩み解消講座 第5回

どんなにストレッチをしても体が柔らかくならないと思っている人もいる。本当だろうか?(c) dolgachov-123RF
日経Gooday(グッデイ)

カラダについてのお悩み、ありませんか? 体調がいまいちよくない、運動で病気を予防したい、スポーツのパフォーマンスを上げたい…。そんなお悩みを、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが解決します! 今回は、自分の体は絶対に柔らかくならないと思っている人に対して、「ストレッチをずっと続けたい」と思うようになるぐらい、ストレッチのメリットをとことん解説してくれます。

今月のお悩み
私だけ? ストレッチをしても体が柔らかくならない

 40代、会社員の女性です。

 コロナ禍でのテレワーク、外出自粛の生活が続き、運動不足を痛感しています。

 できれば家でできるものをと思い、YouTubeで人気のヨガの動画を見ながらやってみました。でも、体が硬く、ポーズがうまくできないし、苦しいだけで、続けられる気がしません。

 YouTubeでほかに運動の動画がないか検索してみたところ、ストレッチの動画も充実していることを発見しました。ヨガはハードルが高いけれど、ストレッチならできるかなと思い、とりあえず気持ちよさそうなものを選んでやっています。

 ただ、自分は体の柔軟性がないほうだと思います。よく、「子どもの頃は柔らかかったけれども、大人になってから硬くなった」という人がいますが、振り返ると、自分は子どもの頃から体が硬かったですね。小学生の頃はマット運動が大の苦手。開脚前転がうまくできず、恥ずかしい思いをした記憶があります。

 ここ1カ月は、なんとか週に1~3回はストレッチを頑張ってみましたが、今のところ体が柔らかくなったという実感が持てません。

 やっぱり40代になると、ストレッチで体を柔らかくしようと思っても遅いのでしょうか? また、痛くてもグイグイ伸ばしたほうがいいのでしょうか。

 こんな私でも、少しでも体が柔らかくなる方法があったら、教えてください。

効果に半信半疑だとストレッチは続かない

ストレッチを始める人のなかには、「続けていれば、本当に体が柔らかくなるの?」と、半信半疑になってしまう方が多いように感じます。

最初にお伝えしたいのは、柔軟性をアップするには、最低でも2~3カ月、毎日コツコツ、ストレッチを続ける必要があるということです。ダイエットや英会話と一緒で、数日ストレッチを頑張ったからといって、すぐには柔らかくならないのです。

しかし、2~3カ月という期間は、人によってはとても長く感じます。ですから、半信半疑のまま取り組むと、不安になったり、自信をなくしたりして、途中であきらめてしまう人が多いのです。

ですから、私はクライアントで「ストレッチを続ける自信がない」という人には、ストレッチの健康効果や、体を柔らかくすることのメリットをとことんお話しします。

「とりあえずストレッチを始めてみた」という相談者さんの選択は、大正解です。筋トレや有酸素運動ももちろん大切ですが、ストレッチを続けていけば、年齢は関係なく、誰でも必ず柔らかくなりますし、今よりも健康になります。

今回は、その根拠をしっかりお話ししましょう。読み終わる頃には、必ず、「ストレッチを続けよう」と思ってもらえるはずです。

体が硬い人ほど血管も硬い

まず、ストレッチをやらずに、筋肉の柔軟性が低下したままでいると、筋肉にどんな現象が起きるかを解説します。

柔軟性が低い人の筋肉は、短く、緊張しています。筋肉が緊張した状態でいると、リラックスしているときよりも余計にエネルギーを使うため、疲れやすくなります。また、血液の循環も悪くなり、酸素や栄養素が欠乏し、老廃物がたまりやすくなり、痛みを感じやすくなります。

体に痛みを感じると、緊張がさらに強くなるので、疲れや痛みもさらに感じやすくなります。こうして、痛みと緊張のスパイラルから抜け出せなくなると、体を動かすことが苦痛となり、身体活動量も減っていきます。その結果、ますます筋肉の柔軟性が低下してしまうのです。

また、最近よく言われているのは、筋肉の柔軟性と病気との関係です。

柔軟性が高い人は、血管も柔らかく、動脈硬化のリスクも低いといえます。逆に柔軟性の低い人は血管も硬く、血圧も上がりやすいのです。

中高年では体の柔軟性が高いほど血管も柔らかい

成人526人を対象に血管の硬さと体の柔らかさを調べたところ、若年者では相関関係は見られなかったが、中年以降では体が硬いほど血管も硬いという結果に。(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009; 297: 1314-1318.)

ですから、「最近、体のあちこちに痛みを感じるようになった」「血圧が上がりやすい」という方は、実は筋肉の柔軟性が低下しているのかもしれません。

さらに、柔軟性の低下は、姿勢の悪さや、ケガの原因にもなります。

体の表側と背側、左側と右側など、相対する筋肉の柔軟性がアンバランスだと、姿勢が悪くなり、老けて見えてしまいます。筋肉は硬くなると短く収縮し、硬いほうへと体が引っ張られるので、前に引っ張られると猫背に、後ろに引っ張られると反り腰になる、という具合です。

これは、キャンプでテントを立てるときに、さまざまな方向からそれぞれ均等の力で引っ張られないと、支柱が真っすぐに立たず、テントの形がゆがんでしまうのと一緒ですね。

そして、柔軟性の不足によって関節の可動範囲が狭くなると、歩いているときに十分に脚を上げられなかったり、足首の関節の曲げ伸ばしが足りず、転倒しやすくなります。

また、柔軟性が不足した筋肉は硬く収縮しているため、強い力で一気に引き伸ばされると切れてしまいます。信号を急いで渡ろうとしたときや、子どもの運動会などで急にダッシュをしたときに、肉離れを起こす原因はここにあります。

以上のことから、筋肉の柔軟性が向上すると、健康的で安全に動ける体になっていくことも分かっていただけたかと思います。繰り返しになりますが、運動不足を感じている相談者の方が「まずはストレッチから始めてみよう」と行動を起こしたことは、非常に良い選択なのです。

筋肉は「長くなるほど」柔軟性が増す

それでは、本題の「ストレッチを続けていけば、本当に誰でも体は柔らかくなる」というお話をしましょう。

柔軟性の高い筋肉というと、多くの人はゴムのように「ビヨーン」と伸びたり縮んだりするイメージを持つかもしれませんが、実はそうではありません。筋肉は「長くなるほど」柔軟性が上がるのです。

筋肉は、筋線維という細胞が束になることで、構成されています。そして、筋線維はサルコメア(筋節)がつながって形成されたものです。筋線維を鎖、サルコメアを鎖の一つ一つの輪とイメージすると、理解しやすいと思います。

そして、サルコメアを増やし、筋線維を長くすれば、筋肉の柔軟性は誰でも上がっていくのです。

では、サルコメアはどうすれば増えるのでしょうか? その代表的な方法がストレッチなのです。

ただし、サルコメアを増やすには正しい方法でストレッチを行う必要があります。ポイントは大きく分けて4つ。以下、一つずつ解説しましょう。

(1)2~3カ月間は毎日ストレッチを行う

毎日、ストレッチで、筋肉をグーッと引っ張り続けたとします。すると、「なぜ、毎日、こんなに筋肉を引っ張るんだ? 筋肉が切れてしまうじゃないか!」と、脳が反応し、体を守ろうとして、細胞分裂を起こし、サルコメアの数を増やします。

大事なのは、毎日、毎日、「早く筋肉を長くしてくれないと切れちゃうよ!」と信号を送り続けることです。1回だけ行っても脳は反応しませんし、週1回程度でも「あ、週1回のイベントね」と脳が判断し、サルコメアの数を増やそうとまではしてくれません。毎日、筋肉を伸ばし続けることで、約2~3カ月後にはサルコメアの数が増え、柔軟性の向上が実感できます。

(2)「イタ気持ちいい」強さで伸ばす

ストレッチは「イタ気持ちいい」強さで伸ばす。イタイと感じるほど強く伸ばすと、逆に筋肉が硬くなるので注意。(c)Sebastian Gauert-123RF

サルコメアを増やすためには、脳に「筋肉が切れそう!」と思わせることがポイントですから、「気持ちいい」と感じる程度の強度でストレッチを続けても、柔軟性の向上は期待できません。

一方、「イタイ」と感じるほど強く伸ばすのもNG。筋線維には筋肉の長さを察知するセンサー(筋紡錘)が備わっています。筋肉を切れる寸前まで伸ばすと、筋紡錘がそれを感知し、「このままだとヤバイので筋肉を収縮させなさい!」と脳に指令を出します。すると、サルコメアが増えるどころか、逆に筋肉が硬くなり、伸びなくなります。

効果的なストレッチの強度は「イタ気持ちいい」と感じる程度。伸ばしたときに、筋肉がプルプルと震えてきたら、それは強すぎるのだと覚えておきましょう。

(3)伸ばしたら「20~30秒キープ」を2~3セット繰り返す

ストレッチは1部位に対し、伸ばしてから20~30秒キープを2~3セット繰り返します。1~2分伸ばし続けるよりも、「いったん緩めて再び伸ばす」を繰り返すことが、ストレッチの効果をより上げていくコツです。

例えば立位体前屈を行った際、多くの方は1回目より2回目のほうが、柔軟性が上がっていると感じると思います。これは、サルコメアの数が増えたことが理由ではなく、筋肉を包む組織である「筋膜」による抵抗が弱くなるためです(残念ながらサルコメアは1回のストレッチで増えることはありません)。

筋膜は、一度引き伸ばされると緩むという性質があります。つまり、「伸ばして戻す」動作を繰り返すことで、どんどん筋膜が緩んでいくのです。すると、サルコメアを増やすために最適な強い刺激を、筋線維に与え続けることができます。

また、筋膜は体が冷えていると硬くなり、体温が上がると緩むのが特徴です。実は私たちトレーナーも、クライアントにストレッチを行う際、最初にマッサージとして筋肉を繰り返し押して温め、筋膜を緩めてから行います。ですから、運動の後やお風呂上がりにストレッチを行うようにすると、全身の筋膜が自然と緩むので、効果もアップしますよ。

(4)ストレッチは硬い筋肉を優先して行う

人はストレッチを行う際、もともと柔らかい筋肉ほど、一生懸命に伸ばそうとする傾向があります。やりやすい部位をつい優先してしまう気持ちは分かりますが、それでは柔らかいところはより柔らかく、硬い部分は硬いままになり、全身の柔軟性がアンバランスになる一方です。

ですから、ストレッチは硬い筋肉を優先して行いましょう。できれば一度、ストレッチやマッサージのサロン、ジムのトレーナーなどの専門家に、どこの筋肉が硬いのかをみてもらうといいでしょう。

このとき、部位ではなく「筋肉名」で教えてもらうことが大切です。「股関節が固い」「肩回りが固い」と言われても、その一つの部位にある筋肉はたくさんあります。股関節や肩回りの「どの筋肉か」を聞いて、その筋肉名を本やインターネットで調べ、具体的なストレッチ方法を探せばOKです。

◇   ◇   ◇

サルコメアは、年齢とともに数がどんどん減っていきます。それでも、毎日ストレッチを続ければ、何歳になっても柔軟性は向上することができます。継続は力なり。いつまでも快適に動ける体をキープしてください。

【中野さんからのアドバイス】
体が硬いのを解消するには…

▼ストレッチを毎日2~3カ月続ければ誰でも柔らかくなる
▼「イタ気持ちいい」強さで伸ばす
▼伸ばしたら「20~30秒キープ」を2~3セット繰り返す
▼ストレッチは硬い筋肉を優先して行う

(まとめ:長島恭子=フリーライター)

[日経Gooday2020年8月19日付記事を再構成]
中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんなど、多くのアスリートから絶大な支持を得る。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

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