タイ、9月末まで非常事態宣言延長へ デモ沈静化狙いか
【バンコク=岸本まりみ】タイ政府は19日、新型コロナウイルス対策の非常事態宣言を9月末まで延長する方針を明らかにした。約3カ月ぶりに市中で新型コロナの感染者が確認されたことを受けた措置。タイでは学生らによる反政府運動が活発化しており、政府が新型コロナ対策を名目に政治集会の取り締まりを強める可能性もある。

非常事態宣言の延長は5度目。閣議で後日、正式決定する。19日に86日ぶりに新たな市中感染が確認されたことを受けて方針を固めた。タイでは5月下旬から市中感染が確認されていなかったが、プラユット政権は3月下旬の発令以降、非常事態宣言の延長を繰り返し、直近では8月末までとしていた。
新たな感染者は6月にアラブ首長国連邦(UAE)から帰国した女性。14日間の隔離終了後、タイ東北部の故郷に戻って生活していた。国外に働きに出ようと18日にバンコクで再び検査を受け、陽性が確認された。
タイでは足元で学生らによる大規模な反政府集会が相次いでいる。16日にバンコク中心部の民主記念塔で開かれた集会には2万~3万人(主催者発表)が参加し、2014年の軍事クーデター以降で最大級の反政府デモとなった。
軍政の流れをくむプラユット政権が非常事態宣言を通じ、政治集会に対する締め付けを強めるとの見方も浮上している。19日に会見した国家安全保障会議(NSC)のソムサック事務局長は「非常事態宣言の延長はデモを押さえつけるためではない」と強調した。