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中央も地方も…馬券販売、ネットのみで前年比プラス

2020/8/22 3:00
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クロノジェネシス(左端)が制した第61回宝塚記念。レース単体の売り上げは200億円を突破した=共同

クロノジェネシス(左端)が制した第61回宝塚記念。レース単体の売り上げは200億円を突破した=共同

新型コロナウイルス感染拡大により2月29日から無観客開催を続けている中央競馬の売り上げが、8月8日の時点で前年同時期を上回った。7月から一部の事業所で現金発売が再開されたとはいえ、現在の発売チャネルはほぼネットのみの「一本足打法」。現金発売は昨年の年間売り上げの3割弱を占めており、無観客開催が長期化すれば大幅な売り上げ減が避けられないとみられていたが、その予想は完全に覆された。地方競馬も今年4-7月の売り上げが前年同期比33.1%増で、伸び率は前年度(16.2%)の2倍以上。コロナ不況は既に一般経済に濃い影を落としているが、競馬界への影響は小さいようだ。

中央、5月後半を境に好転

中央の売り上げは8月8日時点で前年を上回り、同16日時点で約1兆8262億5771万円で前年比1%増となっている。週単位の売上高が前年比プラスに転じたのは日曜日にヴィクトリアマイルが行われた5月第3週だった。土曜の16日は雨天だったが、東京、京都、新潟3場の合計は約227億6615万円で前年比16.5%の大幅増。翌17日は人気馬アーモンドアイの参戦もあり、ヴィクトリアマイルの単体売り上げは約159億284万円とわずか0.5%とはいえ前年を上回った。同日の東京、京都の売上高は前年を割ったが、新潟が2割近く伸びたため、この日の合計は約369億1163万円で前年比1.8%増を記録した。無観客態勢入り後、土日とも1日の売り上げが前年を上回るのはこれが初めてだった。これ以降、同じ条件で比較できる16日間でみると、5月31日の日本ダービー当日以外は、全て1日売上高が前年を上回っている。

宝塚記念当日の6月28日は、同レースの単体売り上げが約203億9865万円と、3年ぶりに200億円の大台を突破。東京、阪神、函館3場の合計も約440億7323万円で、前年を5%上回った。G1レースの場合、「ライトファン」と呼ばれる普段は競馬への関心の薄い人の参加が多く、またこうした人は現金で購入することが多い。現金購入ができないと大レースほど影響が大きくなると思われていただけに、ネットのみで前年比プラスを記録した意味は大きい。無観客開催当初は重賞レースの苦戦が目立っていたが、宝塚記念の結果は、ネットだけでも十分に立ちゆくことを示した。

地方は今年度9000億円台乗せも

地方の勢いは中央以上だ。2月末の無観客態勢入り当初は、最大規模の南関東(大井、川崎、船橋、浦和)が苦戦した。首都圏の競馬場や場外施設を利用する人が多かったためで、3月は4場の1日平均売り上げが前年比17.7%の大幅減に。だが、年度の替わった4月には2.3%増と持ち直した。

大井競馬場で行われた帝王賞を制したクリソベリル。このレースの売り上げは従来のレコードを更新する29億円に達した=共同

大井競馬場で行われた帝王賞を制したクリソベリル。このレースの売り上げは従来のレコードを更新する29億円に達した=共同

南関東以外は、もともと現金発売の利用者が少なかったため、3月も金沢と岐阜・笠松を除けば前年比プラスを記録し、4月には全施行者の1日売り上げが前年比25%以上の大幅増となった。5月以降は南関東も回復軌道に乗り、4-7月は全体の売り上げが約3112億8914万円に達し、1日平均では前年比34%増に。地方競馬の売り上げは2019年度、22年ぶりに7000億円の大台を回復したが、今の勢いなら今年度は9000億円到達も視野に入る。歴代最高は1991年度の約9862億3944万円で、9000億円を超えたのは90、91年度の2回だけしかなく、現在の数字は歴史的と言える。

6月以降は、中央馬の参戦する交流重賞(ダートグレード)当日の売り上げレコード更新が相次いでいる。6月24日の帝王賞(大井)は、単体売り上げ約29億2995万円、1日売り上げ約47億9176万円がともにレコード更新。同じ大井のジャパンダートダービー(7月8日)も単体が約23億3033万円(前年比36.7%増)、1日が約42億8932万円(同29.3%増)の大幅増で歴代最高を記録した。

北海道・道営は今年度だけで1日売り上げのレコードをすでに3回も更新。8月13日のブリーダーズゴールドカップ(門別)では、単体が約7億2836万円、1日売り上げが約17億412万円を記録。今年度に2度記録された1日11億円台のレコードを軽く上回った。例年、この時期はお盆休みと重なり、地方施行者にとっては稼ぎ時。今年はファンの来場もままならない状況だったが、感染拡大の息苦しい雰囲気の中で、馬券購入が数少ない気晴らしとして機能している。

競馬場来場にはまだ高い壁

中央の年間売り上げが前年比プラスに転じた8月8日、日本中央競馬会(JRA)は、15日に予定していた新潟競馬の限定的一般入場者受け入れの中止を発表した。計画では、対象を新潟県在住者に絞って、人数も1日619人(指定席の半数に相当)に限定。来場者の大半が自家用車を使用しており、他場に比べるとハードルは低かったが、7月以降の感染者急増が足を引っ張った。既に夏の開催を終えた函館、福島両競馬場は、7月25日から対象レースを絞って現金発売を再開したが、秋以降は開催が感染者の多い大都市圏に移る。来場再開への見通しは立っていない。

予定されていた観客の一部入場が見送られ、閑散とした新潟競馬場正門(8月15日)

予定されていた観客の一部入場が見送られ、閑散とした新潟競馬場正門(8月15日)

一方、地元が7月末まで感染者の出なかった岩手競馬は7月12日、平地競馬で最初にファンの入場を再開。8月10日のダートグレード、クラスターカップでは、武豊騎手騎乗の中央馬マテラスカイが優勝し、ファンの拍手を浴びた。南関東でも指定席限定入場を始めている。地方が入場再開に動けるのは、入場者がそう多くないためだ。中央は普段の日曜でも東京で4万―5万人、中山で2万―3万人程度が訪れ、多くは場内を動き回る。指定席自体が多くなく、間隔を空けて使用すると収容能力は限られる。少なすぎるとファンの不満を買いかねない。

来場再開は見えないが、競艇では選手に感染者が出て開催中止となったケースもあり、競馬は無事に進行できているだけでも幸いか。入場料やグッズなどの販売収入に支えられている他のスポーツは、存立自体が脅かされており、あるJRA幹部は「目先の資金繰りを心配しなくて済むだけでも奇跡的」と話す。一方で、無観客態勢が長期化した場合、競馬専門紙が苦境に陥るなどメディア環境も変わるため、馬券検討に不可欠な情報提供のあり方や、集客を目的としたプロモーションの見直しも迫られる。非常態勢をただ回すだけで済まない局面が近づいている。

(野元賢一)

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