レバノン元首相暗殺事件、親イラン勢力の被告に有罪
【イスタンブール=木寺もも子】2005年に起きたレバノンのハリリ元首相暗殺事件で、国連が設置した国際法廷は18日、親イランのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの被告の男に有罪を言い渡した。4日の首都ベイルート爆発で政治・経済危機にあるレバノンで国内対立が深まり、情勢がさらに混迷する可能性がある。

オランダ・ハーグ郊外に設置されたレバノン特別法廷で、テロの計画や実行、殺人などの罪を認定されたのは、ヒズボラのメンバーのサリム・アイヤシュ被告。ほかの3人の被告は証拠不十分で無罪となった。4被告は行方不明で、裁判は欠席のまま行われた。量刑は別途審理される。
判決によると、アイヤシュ被告は05年2月、ベイルート市内を走行中のハリリ元首相(04年に辞任)の車列を爆破し、元首相ら22人を殺害、200人以上を負傷させる事件の準備や実行を担った。
判決は「ヒズボラ指導部の直接関与を認める証拠はない」と指摘したが、事件は政治的なテロだったと断定した。ハリリ元首相は当時、イスラム教スンニ派のリーダーで欧米やサウジアラビアに近く、シリアやイランの影響下にあるヒズボラと対立していた。
ハリリ元首相の子のハリリ前首相は判決を受け「ヒズボラは償わなければいけない」と述べた。
レバノンでは今月4日に起きた大規模爆発の後、ヒズボラの支援を受けるディアブ政権が総辞職を表明した。各政治勢力は後任を巡る協議を行っている。有罪判決でヒズボラを巡る対立が激化し、協力が難しくなる可能性がある。ハリリ(子)前首相も後任首相候補の一人とされている。
ヒズボラは関与を否定しており、特別法廷の判決を受け入れない考えを示していた。
05年の暗殺事件はレバノンを二分した。シリアの関与が疑われ、シリア軍は同年、レバノンからの撤退に追い込まれた。11年に特別法廷が被告らを起訴する際にはヒズボラ系の閣僚らが辞任し、当時のハリリ(子)政権が崩壊した。