米「条件付きで新START延長可能」 核軍縮めぐり
【ワシントン=中村亮】米国務省のマーシャル・ビリングスリー大統領特使(軍備管理担当)は18日の記者会見で、条件付きで新戦略兵器削減条約(新START)の延長が可能だとの見方を示した。中国の参加を棚上げして米ロでの核軍縮交渉を先行させる。

米ロは17~18日、ウィーンで戦略的安定に関する高官協議を開いた。ビリングスリー氏は新START延長に向けて3つの条件をあげた。具体的には(1)すべての核戦力を制限対象にする(2)査察を強化する(3)将来的に中国が参加する仕組みにする――と説明した。これらの項目について「政治的拘束力のある合意」を目指すという。
新STARTは戦略核弾頭に加え、その運搬システムである大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配備数を制限している。
米国が目指す新合意は制限対象を新STARTに含まれていない短・中距離の核ミサイルなどに広げるものだ。査察強化も新STARTの内容の改善を意図している。新合意は法的拘束力を伴わないとみられ、条約に比べて交渉のハードルは低い。トランプ政権は11月の大統領選に向けて短期的な成果を求めている可能性がある。
一方でロシアのリャプコフ外務次官は協議後に「ロシアは(新START)延長を支持するが、何らかの代償を払う用意はない」と述べた。米国が表明した延長条件の受け入れに難色を示したもので、今後の米ロ交渉は曲折が予想される。
米国はこれまで米中ロでの核軍縮の新しい枠組みに同時合意することを目指してきたが、今回は中国の参加を将来的な目標に修正した。米ロに核戦力で劣る中国が参加を一貫して拒否しているためだ。米国はまずロシアと協議をまとめて中国に参加を迫る狙いだが、中国が応じるかは今後も見通せない。
新STARTは2021年2月に期限切れを迎える。仮に失効すれば1972年以降、初めて米ロの核軍縮の枠組みが消滅することになる。