バイデン氏、巨大企業に増税 格差是正の財源に

米大統領選
2020/8/18 21:45 (2020/8/19 5:18更新)
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17日、米民主党大会のライブ配信に登場したバイデン氏(左)ら=ロイター

17日、米民主党大会のライブ配信に登場したバイデン氏(左)ら=ロイター

米民主党は17日から4日間の日程で全国党大会を開き、バイデン前副大統領を正式に11月の大統領選候補に指名する。トランプ現大統領との対決は、新型コロナウイルスによる経済危機からの脱却が最大の争点となる。なかでも打撃を受けた低所得層の救済に力点を置いて「脱・分断政治」を鮮明にする。

「選挙まで78日。ドナルド・トランプを1期限りの大統領にしてみせる」。バイデン氏は17日、ツイッターで訴えた。米中西部ウィスコンシン州で始まった党大会には直接参加せず、18日の大統領候補への正式指名を経て、20日に地元デラウェア州から受諾演説する。

17日の党大会ではコロナ対応で注目を集めたニューヨーク州のクオモ知事が「分断がトランプ氏を生み、トランプ氏がそれをより深刻にした」と批判。トランプ流の「分断政治」への対抗が鮮明になった。

米経済は新型コロナで失業率が10.2%(7月)と戦後最悪の雇用危機にある。直撃を受けたのが低所得層だ。米連邦準備理事会(FRB)は「年収4万ドル(約420万円)以下の世帯は4割が失業した」と分析する。バイデン氏は労働市場を立て直して格差を是正するため、環境インフラや人工知能(AI)など先端技術への投資などで、1000万人規模の雇用を生み出すと公約する。

バイデン氏の雇用支援や低所得層支援には、巨額の財源が欠かせない。環境インフラに4年で2兆ドルを投じ、製造業支援にも同7000億ドルを拠出する。資金源はアマゾン・ドット・コムなど巨大企業への課税強化だ。トランプ政権は連邦法人税率を35%から21%へと大幅に引き下げたが、バイデン陣営は中間の28%へと戻す考えだ。

米税制経済研究所によると、アマゾンの18年の連邦法人税額はゼロ。税率を上げても巨大企業は節税を徹底する。バイデン氏は「大企業の税逃れは終わらせる」と主張し、純利益の15%を最低でも納税する「ミニマム税」の導入も検討する。

民間試算では、バイデン氏が検討する法人税率上げとミニマム税だけで10年で1.6兆ドルの増税になる。同1.5兆ドル規模だったトランプ減税が、企業税制だけで元に戻る計算だ。

バイデン氏は急進左派の代表格のサンダース上院議員の陣営幹部と政権公約づくりも進める。「打倒トランプ」へ党内結束を強めるには、一大勢力となった急進左派の取り込みが必要だからだ。

穏健路線とされるバイデン氏だが、急進左派が求めてきた株式売却益への課税強化や個人所得税の最高税率上げも公言。調査機関タックス・ファンデーションの試算では個人税制も含む「バイデン税制」全体の増税額は10年で3兆ドルを超す。

もっとも、バイデン氏の巨大IT企業対策は、急進左派が主張する分割論には踏み込んでいない。カリフォルニア州が地盤のカマラ・ハリス氏を副大統領候補に選んだが、ハリス氏の献金リストにはアップルなど巨大IT企業がずらりと並ぶ。

IT企業が集まるシリコンバレーでは期待と不安が交錯する。ITへの理解が深かったオバマ前大統領の政策を踏襲するとの期待感があるほか、ハリス氏の起用でIT大手への強硬論が後退したとの安堵感も広がる。

一方、バイデン陣営は米フェイスブックに政治広告の禁止を求める書簡を送った。ハリス氏もギグワーカーの権利保護に注力した経歴があり、こうした分野で規制が強まる見方を裏付ける。IT大手元幹部が陣営に加わる動きも表面化し「規制強化を前提に、よりよい条件を引き出そうとしている」との分析もある。

産業界を揺さぶる対中政策も、強硬・穏健路線が入り混ざる。バイデン氏は中国が制定した香港国家安全維持法には「米企業に圧力をかけてくるなら中国に制裁を科すべきだ」と厳しい姿勢だ。新疆ウイグル自治区での人権侵害にも輸入規制などでの対抗を要求する。

バイデン氏は次男が金融会社を通じて中国に巨額投資していた事実が明らかになるなど、トランプ氏から「親・中国」と繰り返し指弾されている。民主党は中国への金融規制も辞さない構えで、バイデン氏も強硬姿勢をアピールする。

一方で、トランプ政権が中国製品に課した制裁関税は見直しに向かう可能性がある。バイデン氏は19年5月の出馬演説時に「追加関税は解決策ではない。トランプ氏の手法は古い」と断じていた。党大会で採択する民主党の政策綱領も「自滅的で一方的な関税戦争には頼らない」と明記。綱領作りに携わった同党の通商専門家は「民主党政権では制裁関税を採用しない」と指摘する。

(ワシントン=河浪武史、シリコンバレー=奥平和行)

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