コロナ禍で急増、通販の梱包ごみ 革新素材で削減へ

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/8/21 2:00
保存
共有
印刷
その他
CBINSIGHTS
 新型コロナウイルス禍に伴うネット通販の利用拡大で急増しているのが、配達後に出る梱包材のごみだ。リアルな店舗ではレジ袋の削減などが世界的に進んでいるが、ネット通販では増える一方だ。この問題を解決すべく米ネット通販大手や世界のスタートアップは、革新的な素材を使ってリサイクルやリユースができる梱包材や分解して堆肥になる包装材の開発を急いでいる。

電子商取引(EC)は今、ごみ問題に直面している。2020年6月の米国でのECの注文件数は前年同月比137%増となった。莫大な量の包装・梱包ごみは、消費者と通販各社にとって頭痛の種になっている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

そこで、各社は持続可能(サステナブル)な包装を開発しようと先端素材の技術革新(イノベーション)に取り組んでいる。

持続可能な梱包にはブランドへの愛着心や評判を高めるほかにもメリットはある。EC各社は注文ごとの包装を減らすことで原材料費を大幅に削減でき、荷物を軽く小さくすることで配送費も抑えられる。消費財の包装・梱包にリユースやリサイクルができる素材を使えば、コスト削減費は年間7000億ドルに上るとの試算もある。

CBインサイツのデータによると、先端素材を使ってECの包装・梱包を改善するには3つの手段「リサイクル可能な素材」「リユース可能な素材」「堆肥化可能な素材」がある。

1.梱包資材のリサイクル率を高める

オンラインで購入した商品は主に段ボール箱かクッション封筒に入って届けられる。段ボール箱のリサイクル率は高く、19年には92%に上った。

(出所:米P&G発表資料)

(出所:米P&G発表資料)

米アマゾン・ドット・コムは梱包のリサイクル率をさらに高めるため、様々な取り組みに資金を投じている。例えば、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)と共同で、P&Gの看板商品である衣料用洗剤「タイド」の新しい段ボール製容器を開発した。この箱は100%リサイクルでき、従来のプラスチック容器に比べてプラスチックの利用を6割、水の使用を3割減らせる。重さは4ポンド(約1.8キログラム)軽くなり、配送コストも抑えられる。

一方、よく使われているプラスチック製クッション封筒はリサイクルが難しい。例えば、アマゾンのプラスチック製クッション封筒には複数のプラスチックが使われており、家庭で資源ごみに出してもリサイクルできない。

アマゾンは自社のクッション封筒のリサイクル率向上にも取り組んでいる。同社の包装研究部門はこのほど、100%リサイクル可能なクッション封筒を開発した。独日用品・化学大手ヘンケルと提携して、軽くて開封しやすく、100%リサイクル可能な封筒を作りだした。

ヘンケルはクッション封筒の衝撃を吸収する気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)に代わるリサイクル可能な素材の開発を支援した。この新素材は「EPIXテクノロジー」と呼ぶ技術を使った紙向けの接着材で、紙製ストローにも使われている。加熱すると膨らみ、封筒の内側に分散したクッションになる。

(出所:米アマゾン)

(出所:米アマゾン)

もっとも、アマゾンの紙製クッション封筒の技術革新はプラスチック製封筒問題の一部を解決したにすぎない。CSR(企業の社会的責任)のリーダーと広くみなされているアウトドア用品の米パタゴニアですら、いまだにプラスチック製の包装・梱包材を使い、リサイクルは難しい問題だと認めている。

そこでいくつかの企業は、リユース可能な梱包材やプラスチック以外の梱包材を検討している。

2.丈夫でリユース可能なEC梱包材

消費者は荷物を受け取ると、梱包材をリサイクル箱かごみ箱に投げ入れる。しかし、国際郵便機構(IPC)によると、リユース可能な梱包材を望んでいる消費者は3分の2近くに上る。

スタートアップ各社は最大で数千回の使用に耐えられる革新的な先端素材を使ったリユース可能な包装の開発に取り組んでいる。こうした製品は主にリサイクルされた素材や生分解性素材、リサイクル可能な素材を原料としている。リユースできる梱包材はネット通販各社か梱包材会社に返却する。

(出所:スイスのリビングパケッツ)

(出所:スイスのリビングパケッツ)

スイスのリビングパケッツ(LivingPackets)はリサイクル可能な泡状素材である発泡ポリプロピレンを原料に使った箱を開発した。特許を取得したこの梱包材には、発泡スチロールなど従来のクッション材の代わりに、箱の中の商品を抑えるネット状の層がついている。

同社によると、この箱は最大1000回使用できる。追跡アプリや荷物のロックを解除するデジタル錠、電子ペーパーを使った配送伝票など最先端の機能も使っている。

一方、米リターニティー(Returnity)や米ライムループ(Limeloop)などのスタートアップは、リサイクルしたプラスチックを原料とするリユース可能なクッション封筒(バッグ)を開発した。プラスチックは丈夫で防水性もあり、リユース可能なクッション封筒の理想的な原材料だ。各社はリサイクルされたプラスチックを使うことで、原材料を持続的に調達できる。

(出所:米ライムループ)

(出所:米ライムループ)

米カリフォルニア州に拠点を置くライムループはリサイクルした広告板のビニールを原料に使い、洗濯や修繕しながら最大200回使える防水バッグを生産している。通販各社はライムループの袋をオンラインで追跡できる。ライムループは売り上げや環境への影響を分析するデータも提供している。

リターニティーはペットボトルやおもちゃなど一般的な家庭用品の原料であるrPET(リサイクル・ポリエチレンテレフタレート)を使い、リユース可能な配送バッグを生産している。ポーチは最大50回使用でき、寿命が来ればリサイクルできる。

(出所:フィンランドのリパック)

(出所:フィンランドのリパック)

フィンランドのリパック(RePack)もリサイクルされたポリプロピレンからリユース可能なクッション封筒を生産している。ポリプロピレンは食品のパッケージから車のバッテリーまで様々な製品に使われている一般的なプラスチックだ。寿命が来れば、リサイクルするかバックパックなど新たな製品に作り替えられる。リパックは消費者がクッション封筒を返却するとクーポンを受け取ったり、寄付をしたり、ポイントをためたりできるサービスも提供している。

3.生分解性で堆肥にできるEC梱包材の新しい波

生分解性で堆肥化可能な梱包材も現れている。キノコの根やリサイクルした木の繊維などのこうした素材は、有機物に分解できる。こうした素材を使えば埋め立て処分されるごみが減り、素材のリサイクルやリユースの際に必要な洗浄や加工を省略できる。

こうした生分解性で堆肥化可能な梱包材も代替素材を探している企業の支持を得つつある。

この分野の多くのスタートアップは、植物由来の原料を使って生分解性で堆肥化可能な包装の開発に取り組んでいる。

(出所:米エコベーティブ・デザイン)

(出所:米エコベーティブ・デザイン)

発泡スチロールは生分解性ではないことで悪名高いが、いまだ扱いが繊細な製品の緩衝材としてよく使われている。米エコベーティブ・デザイン(Ecovative Design)はキノコの根(菌糸体)を原料にした堆肥化可能な発泡スチロールの代替素材「マイココンポジット(MycoComposite)」(特許取得済み)を開発した。現在は米国と英国で生産を拡大している。

(出所:米グリーンセルフォーム)

(出所:米グリーンセルフォーム)

米グリーンセルフォーム(Green Cell Foam)もコーンスターチを原料に使った発泡梱包材を手掛けている。これも堆肥化可能なうえ、水に溶けやすい。

米アリゾナ州に拠点を置くフットプリント(Footprint)は特許を取得したリサイクル繊維の技術を活用し、様々な梱包材を生産している。同社の製品はバガス(サトウキビ繊維)や汚れていない段ボールくずを原料としており、生分解性で堆肥化可能だ。米食品大手コナグラ・フーズや米食肉大手タイソン・フーズ、米ディスカウントストア大手ターゲット、米メディア大手コムキャスト、米音響機器メーカーのボーズなどが顧客に名を連ねている。

(出所:ニュージーランドのノーイシュー)

(出所:ニュージーランドのノーイシュー)

さらに、ともにニュージーランドに拠点を置くノーイシュー(Noissue)とベター・パッケージング(The Better Packaging Co.)は、持続可能な包装を提供している。両社は従来のプラスチック製包装に置き換え可能な、PBAT(ポリブチレンアジぺートテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)、コーンスターチを原料にした堆肥化可能な包装を提供している。

PBATは石油化学製品に由来しているが、生分解性で堆肥化可能な樹脂。PLAはコーンスターチやタピオカ、サトウキビを原料とするバイオプラスチックだ。PBATは堆肥化可能だが、PLAは工業的に分解処理する必要がある。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]