恐竜のがん、世界初確認 CTや顕微鏡使い化石解析

カナダの王立オンタリオ博物館などのチームは18日までに、カナダで発掘された恐竜の化石からがんの痕跡を世界で初めて見つけたと発表した。人間の診断でも使うコンピューター断層撮影装置(CT)や顕微鏡で、すねの骨の組織を詳しく調べ、形態から骨のがん「骨肉腫」と特定した。
この恐竜は頭の後ろのフリル(襟飾りのような部分)や角を持つ植物食の角竜類「セントロサウルス・アペルタス」で、白亜紀後期の約7700万~7550万年前に生きていた。チームの千葉謙太郎・岡山理科大助教は「絶滅した動物と人間の病気を比べれば、病気の長い歴史をたどるヒントになる」と話した。
1989年に見つかった化石は、すねの骨の端が変形し、表面もでこぼこしているという奇妙な特徴があったが、当初は骨折の痕とされていた。

これにオンタリオ博物館の古生物学者らが疑問を持ち、2017年に医学の専門家らとチームを結成。CTによる骨内部の3次元解析や、千葉さんが作った骨の薄片の顕微鏡観察を通じ、骨の組織が崩れているなどの、がんの特徴を確認した。がんは骨を広く侵食し、肺など他の臓器にも転移していた可能性もある。
ただ、死因は病気ではないらしい。近くで同種の恐竜化石が多く見つかっていることから、集団で洪水などの災害に襲われたようだ。チームは「大きな群れで暮らしていたため、病気で弱っても仲間に守られ、ティラノサウルスなどに狙い撃ちされずに生きられたのではないか」とした。
成果は英医学誌ランセット・オンコロジー電子版に掲載された。〔共同〕